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2014.02.20 10:24

偶然と、必然と by SERA

最近、思う。
あいつと、あたしの関係。
あの時から、無数の偶然が重なった今の関係。
それらは、必然だったのか、と。

放課後の陣代高校。
その屋上で手すりにもたれかかりながら、あたしはとりとめもなくそんな事を考えながら暮れていく夕陽をぼんやり眺めていた。

あいつ――相良宗介。
陣代高校2年4組。
常識はずれの戦争バカ。
生徒会執行部安全保障問題担当・生徒会長補佐官。
そして。
<ミスリル>所属のSRT要員。
千鳥かなめの、護衛役。

あたし――千鳥かなめ。
陣代高校2年4組、学級委員。
ごく普通の女子高生。
生徒会副会長。
そして。
ブラックテクノロジーに触れることができる"ウィスパード"。
相良宗介の、護衛対象。

「ふぅっ……」

最近涼しくなり始めた風が、頬を撫でていく。
その中で、何となくため息を吐いてみたりして。
悩みというほどの悩みではないし、そもそも悩む意味がないのかも知れない。
発端は何のことはない、日常の一言からだった。

「ねぇ、カナちゃん。昨日のあれ見た?」
「んー、昨日?」

泉川駅を降りて、いつもの待ち合わせ場所から学校へ向かう道。
唐突にキョーコが言ったのだ。
「クロノ・サーガっていう映画だよ。
 あのヒロインの台詞、良かったよね~。
 "全ての出会いは偶然じゃない。必然なんだ"ってところなんか、格好いいなぁって……。
 ラストなんて現実にヒロインが主人公を捜しにくるみたいに感じて感動的だったじゃない」
「んー、そだねー」
「もぅ、カナちゃん聞いてる?」
「ゴメン、昨日満足に寝れてなくてさ……」

全ての出会いは偶然ではなく必然――。
ずっと、その言葉が気に掛かっていた。
じゃあ、あたしとソースケもそうだったのだろうか?

「千鳥。ここにいたのか」
「ソースケ……?」
「教室に鞄が置いたままになっていたのでな。不審に思って君のことを探していた」
「そう」
「具合でも悪いのか?しかしここでは余計に風邪を悪くするし、何より狙撃の格好の標的になるぞ」
「風邪はともかく、狙撃なんてされないって」

彼なりの心配を感じ取って、苦笑しつつもあたしは嬉しくなる。
その気持ちに後押しされたか、ついあたしはあの疑問を口にしてしまっていた。

「だが…」
「ねぇ、ソースケ」
「どうした、千鳥?」
「その、さ。あたし達って……互いに特殊な環境で出会ったよね?」
「……君にしてみれば、確かにそうかもしれん」
「もし、もしも、だよ。
 ソースケやあたしが、ごく普通の高校生だったら――あたし達……出会えてたのかな……」

聞くべきではなかったかもしれない。
言ってしまってから、そう思った。
多分、現実的ではないと即座に否定されるのが怖かったから。
否定されると分かっていて、聞いてみたかった。何故かは――自分でもわからない。
でも意外に、ソースケは逆八の字眉毛をいつも以上に寄せて考え込んでしまった。

「あはは……ゴメン。変な事聞いちゃったわね。忘れちゃっていいから…」
「……いや、別に変ではない」
「えっ?」
「出会う時期は、遅くなったかも知れないが……。間違いなく、俺は君と出会っていただろう」

断言するソースケに、頭の中が一瞬、真っ白になった。

「人の出会いは、必然性の上に成り立つ。戦場でもそうだった。そして恐らく、それはここでも言える。
 少なくとも俺には…君が必要だったのだろう。君の行動力や、生きる力に、俺は何度助けられたか分からない」

一瞬の空白の後。
身体の芯が、じわっと熱くなる。顔に血が上っていくのがはっきり分かった。
あの時、あの場所で感じた感情。それがあたしの心の中でだんだん大きくなっている事を感じずにはいられなかった。
だって、その一言だけでこんなに嬉しいんだから。
たったそれだけの事で、心の靄がすっきり晴れてしまうんだから。

「……ありがと……ソースケ…」
「む、何がだ?」
「ううん。何でもない。さ、帰ろ?」
「顔が赤いぞ?熱があるのか?」
「違うって。夕陽のせいよ」

綺麗な夕陽に感謝しなきゃね。
今のあたしの顔、たぶんトマトみたいに真っ赤になってるはずだから……。

「むう……ならば、いいが」
「そうだ。久しぶりに夕食食べていかない?腕振るってあげるから!」

そう。
偶然も必然も関係ない。
今、ソースケとあたしが出会えたという事実。それが一番大切な事なんだって。
願わくば、この関係がずっと続きますように……。

終わり

 


あとがき(のような物)

ふ~、やっと終わったなぁ。
勢いこんな短編を書いてしまいましたが…。
なんだか浮かんできたイメージを書き付けただけのよーな気もするのは気のせいか…?
こんな稚拙な文章でも、楽しんで頂ければ浮かばれます(って死んでるんかい!)
以上、SERAでした。

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