Please Kiss Me♪ 第8話 by 東方不敗
なんだかんだで眠ったままのかなめさんを家に放り込んでから帰ってきたらもう10時ごろになっていた。
「なんかつかれましたね」
「確かに、そうですね」
「ソースケさん、これからどうします? 寝ますか?」
スリッパをはきながらソースケさんに尋ねるとぽりぽりと頬を掻きながらこう言ってきた。
「いえ……なんというか、目が覚めてしまったので。少し、起きています」
「そうなんですか。……実は、わたしもです」
くすっと笑う。
「色々あったから、目、覚めちゃったんですね」
「そうかもしれませんね」
そんなやり取りをしながらリビングに入る。
「じゃ、コーヒーでも淹れますから。ソースケさん座っててください」
「了解しました」
冷蔵庫から出した豆と水をコーヒーメーカーに入れて、スイッチをぱちって押す。ぽふってソースケさんの横に座りながら、
「じゃ、後は待つだけです」
「はい」
「……今日は、いろいろありましたね」
「そういえば、そうですね」
「ええ。かなめさんと常盤さんがいきなり家に来て、外でクルツさんとメリッサに会って、それでまたこの家に戻ってきて……」
今日あった色々なことを思い出しながら言う。本当に、いろいろありましたねえ……
「にしても、千鳥は家に帰してしまってよかったのでしょうか……?」
「大丈夫ですよ」
きっぱりと言う。むしろ、このまま家に泊めたりしたら危なかった気がします。絶対よからぬことたくらんでましたし。
「そうしょうか……?」
「ええ、そうです。それに……わたしはソースケさんと二人っきりの方が、その……いい、です……」
セリフの途中でだんだん顔が熱くなっていっちゃう。う~、やっぱりこういうこと言うのまだ恥ずかしいです……
でも、いつかはっきり言いたいです。
「……テッサ……」
「あ、はい……」
いつのまにかうつむかせてたらしい顔を上げるとソースケさんがどこか嬉しそうな顔でわたしの事を見てた。ほんのり顔が赤い気がするのは、気のせいじゃなかったら良いと思う。
「ありがとうございます」
「……礼を言われるほどの事、言ってませんよ」
顔が熱くなるのを感じながら言う。なんだかあんな優しそうなソースケさんの顔を見るのは初めてだったような気がする。
ふと、ソースケさんの手がわたしの頬にかかった。え……?
「あ、あのあの、そ、ソースケさん……?」
一気に顔が熱くなっていく。え、こ、これって……
「……いやですか?」
……ソースケさん、ずるいです……
そんな顔で言われたら、嫌だなんて言えるわけないじゃないですか……
「……いやじゃ、ないです」
顔を伏せて上目使いになりながら言う。
「ただ、恥ずかしいだけです……ソースケさんがキスしてくれるなんて、思って、なかったから……」
「……そうですか」
ふっと笑って、ソースケさんがわたしの唇にキスをしてくる。
「ん……。ん、ふぁ……」
長い、長いキス。
なんだか頭がぼうっとなってくる。
ちょ、ちょっと……ソースケさん、このキス、長いです……
「ん……ぷはっ……」
ソースケさんがやっと唇を放してくれたころには頭がぼ~っとしてて思わずふにゃってソースケさんの胸にもたれかかってしまった。
「テッサ?」
「ソースケさん……キス、長いです……頭ん中真っ白になっちゃいそうでした……」
「はあ。その……申し訳ありません」
ちょっと、苦しかったし……
でも……
「でも、気持ち良かった……」
「そう、ですか」
「……ソースケさん」
「はい?」
ちょっと、顔が熱くなるのを感じながら、ぽつりとつぶやく。
「……もう一回、してくれませんか……?」
「は?」
怪訝そうなソースケさんの声。顔がまた熱くなるのを感じながら、
「だから、その、きす……」
ぴぴっ、ぴぴっ。
……コーヒーメーカーの音ですね。
「コーヒー、沸いたみたいですね……」
なんでかくぐったりと脱力しながら言う。はぁ、なんでわたしこんなタイミング悪いんでしょう……?
「そのようですね……」
「ちょっと、取ってきます……」
立ちあがって、キッチンに向かおうとすると、後ろからソースケさんが声をかけてきた。
「テッサ」
「? はい?」
ちゅっ。
「ぁ……」
「……申し訳ありません。その……何故か、こうしたくなりました」
ぽりぽりと頭をかきながら珍しくバツが悪そうにソースケさんが言う。でも、それって……
「……ソースケさん……」
顔がにやけてくのが自分でもわかった。ふふっ……ありがとうございます、ソースケさん♪
「ソースケさん、こっち、向いてください」
「? はい?」
怪訝そうなソースケさんの顔に、ちょっとだけ背伸びして優しくキスしてあげる。
「……テッサ?」
「……ふふっ、ありがとうございます♪」
いたづらっぽく笑いながらそう言ってあげて、わたしはキッチンの中に入っていった。
顔がしっかりにやけてたのは、内緒ですよ。
「そういえば、一緒に住むようになってから結構経ちましたよね……」
淹れたコーヒーをことり、とソースケさんの前に置きながら言う。そういえば、一緒に住むようになってから随分経っていた。入学の手続きとか色々するときからもう一緒に住んでたから、大体、3ヶ月ぐらい経っている。
「そうですね、かなり、経ちました」
「……わたし、最初にあなたと会ったときはこんな風になるだなんて夢にも思ってませんでしたよ」
「自分もです」
「あ、そうなんですか?」
「はい」
「ふふっ、なんだかおかしいですね」
「確かに、そうかもしれませんね」
二人一緒に、あははって笑う。
最初に会ったときは、ホントにただ興味があっただけだった。
ただ、興味があって、話しかけてみたくなって、それで、あんな事件にあって、落ちこんでるわたしの事、がんばって励ましてくれて……
不器用だけど、本当に一生懸命に励ましてくれて……
そのとき、『ああ、これがこの人のやさしさなんだな』ってわかって。
そしたら、すごく好きになってた。
そして、こうやって恋人になって、一緒に暮らして。
幸せな日々を、過ごしてる……
この後は、どうなるのかな……?
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
わたしは……
ちらっと、コーヒーを飲んでるソースケさんに視線を向ける。相変わらずのむっつり顔。でも、誰よりも優しくて、愛しい顔。
「……ねえ、ソースケさん」
「なんでしょう?」
「もし、もしですよ……」
ちょっとどきどきしながら。
ちょっぴりの不安とおっきな期待を胸に秘めながら。
言う。
「もし、わたしが今すぐ……」
――あなたと結婚したいっていったら、どうします?――
言おうとして、やめる。
なんだか、答えを強要するみたいで、嫌だったから。
それに、やっぱり。
こういうことは、男の子の方から言って欲しいから。
「……ふふっ、やっぱり、なんでもないです」
にこって笑いながらそう言ってあげる。
「……そうですか」
「ただ、ちょっと聞きたい事があっただけです」
「聞きたいこと?」
「はい。でも……今は、まだ早いですから。いいんです」
「……よく、わかりません」
「ふふっ、わかったら変ですよ」
わかったら、それこそ超能力者です。
でも……
「ソースケさん……」
「はい」
「……わたし、待ってますからね」
あなたが、そう言ってくれるの。
ずっと、待ってますから……
「……何を、ですか」
「……教えてほしいですか?」
「……はい」
「じゃあ、ちょっとこっちによってきてください」
ソースケさんがちょっとわたしの方に体をよせてくる。わたしはそのほっぺに。
ちゅっ。
「……テッサ?」
「ふふっ、秘密です♪」
「……そうですか」
「はい。秘密です」
ぽふって、ソースケさんの胸に顔を埋める。めずらしく、甘えた声を出して。
「ソースケさん……今日、一緒に寝ていいですか?」
「いつも同じ部屋で寝てるでしょう」
「……ちがくて、そういう意味じゃないんです……」
ちょっと顔が熱くなるのを感じながら言う。
女の子にこれいじょう言わせるつもりなんですか。
わざと怒ったような目をしてソースケさんを見上げると、やがて合点が行ったのか少し困惑気味な顔をしてから、
「……了解しました」
「……ありがとうございます、ソースケさん」
こつん、てソースケさんの胸に頭をあずけると、ソースケさんがきゅって抱きしめてキスしてくれた。
「んっ……ふっ……」
ソースケさん……
きゅって、彼の背中に手を回す。温もりを確かめながら、ちょっとだけ強く抱きしめる。
暖かいです、ソースケさん……
続く
後書きっていう物体
どーもみなさん、東方不敗です。
ラストの後になにがあったかは、秘密です。まー、想像は出きると思いますが(笑)。
さて、長らくお付き合いありがとうございました。次回で最後となります。そして、後少しだけ、この物語に付き合ってください。
それでは。