宗介とソースケ 第3話 by 祀汰ユーの助(みかど)
「ワン!」
宗介の名前を追ってやってきたかなめの目の前には予想だにしなかった生き物がいた。パタパタと嬉しげにふかふかのシッポを振り、舌をたらしてこちらを見つめている。
それはまさに一言でいうなれば―――犬だ。
「何でイヌが・・・・」
「アウン?」
頭を傾げるかなめと共に、犬も不思議そうに頭わ傾げる。“何か用?”といいたげな犬。するとすぐさま、かなめのもとに一人の女性が走って来た。
「もうだめじゃない荘助!」
息を切らしながら走って来た女性は、かなめに目もくれず、犬を抱き上げた。
「勝手に行っちゃわないで」
そう言って、『めっ』と可愛い声で犬に話しかける女性。その女性の言葉にかなめはまた頭にハテナを浮べた。
「ソースケ・・・・?」
「はい?」
すると少女もやっとかなめの存在に気付いたらしく、ぽけんとしているかなめを見た。
「あの・・・・なにか?」
「・・・・・・」
何か?と聞かれても、自分自身が問い掛けたくなるようなかなめ。一瞬、頭の回転が止まったが、すぐさまいつもの高速回転が始まった。
「あ、いいえ、別に。何か叫び声が聞こえたからどうしたのかなーって思って」
「叫び声?」
ああ、と声を上げて、少女は言葉を続けた。
「それ、きっと私のです」
以外とあっさりした答え。
「この子が私の足に抱き着いて、転びそうになっちゃったんです。ごめんなさい、何か誤解させてしまって」
「ああ、そうですか・・・・。ところでソウスケって・・・・」
かなめはその答えに何と答えていいのか、ただ頭の中でぐるぐると荘助のいう名前だけが回転していた。
まさかな思いつつ、聞いてみると、女性は怪訝そうな顔をしながらも、抱き上げた犬をかなめの前にずいと向けると答えた。
「この子の名前です。荘助っていうんです」
――――やっぱり・・・・・・
かなめは予想通りの答えに落胆した。
「今時こんな展開はやんないつーの」
予想外のお決まりの展開に、かなめは目を半開きにして、向けられた犬を見た。
「アウン?」
そんなかなめに頭を傾げる犬、いや荘助。身体全体が茶色く、耳の先だけが黒い。なかなか愛嬌のある顔だが、まあ雑種だろう。
「私のほうこそごめんなさい。なんか勘違いしたみたいで」
かなめは気を取りなおすと、飼い主に頭を下げた。
「あ、いえ・・・・」
そんなかなめに戸惑う飼い主。だがかなめはゆっくりと身を翻すと、とぼとぼといつもの通学路へと戻った。
「ああ、一体私なにやってんだろう」
一つ大きなため息とともに、かなめは静かに歩き出した。
宗介の名前が聞こえて、一人で突っ走って。普通だったらこんなことはしない。
なのに・・・・
彼のことになると、普通ではいられない自分がいる。
かなめは心の片隅でつぶやい。
(さびしい)
あいつがいないと、楽しいはずの学校生活がなぜか物足りなくて仕方がない。
「ああ、もう!」
かなめはもやもやする頭を吹っ切らせようと、天を仰いだ。
そして叫んだ―――
「早く帰ってこーい!あのすっとこどこーーーい!!」
空高くこだまのするかなめの声。
だが、なんとそれに答えが返って来たのだ。
「スットコドッコイという難解な言葉は始めて聞いたな」
「へ?」
驚き振り返るかえめ。
すると、そこにはなんと・・・・・・本物がいた。
「ソースケ!」
今度こそ間違いない。本物だ!
かなめの後ろに突如あらわれたそれは間違いなく、いつもの学生服を着た宗介、かなめのソースケ本人だった。
かなめは満天の笑みを浮かべ、宗介に跳びあがった。
そして、そのまま熱い抱擁・・・・・・と、いうわけではなく。
「どこに行ってたのよー!」
激しいかなめ対宗介用エロボーがヒットする。
「ぐおっ」
いつもの不意打ちの攻撃に、受けなれているとはいえ宗介の身体は仰け反った。
「あんたのせいで大変な目にあったんだから!!」
「襲撃にでもあったか?」
すぐさま姿勢を戻す宗介。やはりかなめの攻撃にだいぶ身体が慣れてきたらしい。
「それ以上よ!」
それ以上といわれ、困惑する宗介。
「新手のASでも現れたか!いや、最近アメリカで新型のミサイル戦闘機が・・・・」
「そうじゃくなて・・・・・」
そのまま言わせておけばキリがない宗介の言葉を遮るかなめ。
相変らず、日本の常識からかけ離れた宗介の言葉だったが、今のかなめには逆にこれが常だと感じられる。
無事帰ってきた・・・・
はー、と安堵の溜め息をつき、かなめは気を取りなおした。
「もういいよ。なんでもないんだ」
そう言って、今度は心配そうな宗介に少し優しい笑顔を向けてやる。
「本当か・・・・・」
「ただちょっと私が早とちりしちゃっただけ。なんでもないよ」
「それなら千鳥」
「ん?」
いきなり愛用の腕時計を見て、宗介はキリっとした顔つきになった。
その表情に一瞬ドキっとするかなめ。
最近どうも、この顔が自分の中で一番の『ソースケのキメ顔』になっていて、鼓動を強くうならせていた。
「急いだ方がいい。後5分が電車が来る」
「はっ!」
宗介の言葉が一瞬でかなめを現実へと引き戻した。
そうだ、自分は学校に行く途中だったのだ!
「何でそれを早くいわないのよ!」
「いや、なかなか話す間が見つけられなくて・・・・」
「いくらでもあったでしょうが!」
一発殴ってやりたい衝動を抑え、かなめはあわてて踵を返した。
「いくよソースケ!」
「ああ」
戦場で鍛え上げられた宗介の足と、毎日購買でパンの強奪線を切りぬけてきたかなめの足なら、今から走ればなんとか間に合う。
二人はいっきに駅へと駆け出しだそうとした。が、かなめはぴたりと足をとめた。
どうした?と自分も止まる宗介。
「千鳥?」
「・・・・・・・ソースケ」
「なんだ?」
「・・・・・お、おか・・・・」
「おか?」
「お、おか・・・・・・おかちめんこ!」
「は?」
いきなり何を言い出すのだ、と宗介は怪訝な顔をしてかなめを見た。
「今日の古典にでてくる所、!よ、よし!行くわよ!!」
「ああ」
あきらかにおかしいかなめの言動に、?をうかべる宗介だった。だが、かなめは何かを誤魔化すように走り出した。
ああ、なんでいえないんだろう・・・・・おかえりなさいって。
そう、宗介の前を走りながらつぶやくかなめだった。
そして後に残されたのは人騒がせな犬とその飼い主。
「一体なんだったのかしらね、荘助」
「ワン!」
おわり
あとがき
きゃー!!ごめんなさーーーーい!!!さんざんまたせてこの内容!どうしまっしよってんだい!
実はもっと違う内容にする予定だったんです。この登場した荘助犬をかなめと宗介が二人でしつけをしていくというものにしていくつもりだったんですが・・・・。
六月に入ってから、学業のほうが段々と忙しくなってしまい・・・・。さんざんお待たせしてしまって、あげくの果てに、打ち切り漫画のような内容。
あー、もうラブラブでもギャグでもなんでもない小説になってしまいました。本当に「おち」無し小説ですー。
機会があれば、もう一度つくりなおして、きちんとしたお話にしたいと思っています。さりらさん、本当にすみませんでした(大涙)
ここでみかどの「ハラキリ」で許して下さい!それでは・・・・・御免!!・・・・・・・ぐふっ・・・・(血)
完
祀汰 ユーの助 (みかど)