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2014.02.20 10:44

宗介復讐計画 第4話 by ドイワー

それは昼休みの事だった。普段は生徒が友達と笑いながらしゃべってたり、一人静かに本を読み、時間と共に終わる昼休みのはずだった。
ところが相良宗介のいる教室だけは違っていた。教室全体の空気が重くなっている。その理由となる人物は相良に怒鳴っていた。
「相良ァ!!今日こそ貴様との因縁にケリをつける!今日の放課後屋上へ来い!!!」
学ランを着、頭には鉢巻。そして何故か目には・・・分厚い眼鏡をかけた椿一成がいた。
「どうでもいいが、今日は無理だ。先約がある」
「先約!?貴様、逃げる気か!?」
「誰も逃げるとは言っていない。先約がある以上貴様の言葉には従えないといったまでだ」
「それを逃げると・・・」
椿は右手を高らかに上げた。
「言うんだぁ!!!」
そして振り下ろした。勢いよく。宗介の机はその一撃によって真っ二つになってしまった。
「どう言うつもりだ。椿」
さすがに宗介も立ち上がる。その視線はまっすぐに椿を捕らえている。
「お前が逃げるからな。こうでもしないと来ないだろ?」
「先約があるといったはずだ。理解できないのか?」
一触即発。今の二人はまさにそれであった。
「あ、あのーチョットいいかな?椿君」
「うるさい!今は黙っ・・・て・・・ち、ち、千鳥か。今日もいい天気だな」
突然人が変わったかのような口調になる椿。
「今日はソースケ、私と一緒に食事とることになってるの。だからいけないって訳。いい?」
「え、あ、その・・・それならば・・・じゃなくて・・・」
「わかったらさっさと失せるがいい」
「アンタは黙ってなさい!!」
そう言うと共に響きの良いハリセン音が響く。宗介は頭を抑えながら『むぅ・・・』といったまま黙り込んだ。
「そうだ、椿君、よかったらこない?」
「え・・・その、何所に?」
「アタシの家よ。沢山いた方が作りがいがあるし」
「家ってその・・・ち、千鳥の、か?」
「そこ以外何所があるの?」
みるみる内に椿の顔が紅潮していく。
「え・・・あ、いや、その・・・い、いい行っていいのか?」
「もちろんよ」
「じゃ、じゃあその・・・行かせてもらう。さ、相良、勝負は後日決行だ。で、では・・」
そういうと椿は逃げるように教室を出て行った。
「?椿君、風邪かな~」
「カナちゃんも意外に鈍感よね~」
「え?」
近くにいた常盤がかなめに言った。ちなみにその後宗介は机無しの授業となった。

その日の放課後。かなめが教室から出てきたところのときである。
「あ、あの・・千鳥」
「?なぁに、椿君」
そこには例の眼鏡をかけた椿一成がいた。
「そ、その、今日・・君の家に行ってもいいという事だったが・・・」
「それが?」
「お、俺は君の家を知らないので・・一緒についていっても・・良いだろうか?」
「良いわよ、別に」
「そ、そうか。助かる」
そんな会話をしながら椿とかなめは校門を出て行った・・・否、その後方に尾行のように付いていく宗介の姿もあった。
「へ~知ってはいたけど椿君、そんなに強いんだ」
「ま、まぁな。瓦20枚くらいなら片手で砕く事も出来る」
「へ~すっごい!今度見せて!」
「あ、ああ・・・」
恐らく今現在の椿一成は生涯最も華やかな時間を過ごしている。椿は心底この時間が永遠に続く事を望んだ。
しかしそういう訳にも行かずかなめの家に辿り着いた。しかし、かなめの部屋の扉の前に一人の男が立っていた。
ぶっきらぼうな顔、そう。相良宗介である。
「なっ・・!相良!何故貴様がココに!!!」
「聞いていなかったのか?俺も千鳥と食事を取る事になっている」
「え・・ほ、本当か?千鳥・・?」
「あっれぇ?聞いてなかったの?」
(・・・き、聞いてなかった・・・)
実はあの時、不意にかなめに声をかけられた椿は完全にしどろもどろで記憶がハッキリしていないのだった。
「まぁいいじゃない。ほれ、あがってあがって」
かなめはポケットから鍵を取り出し扉をあけると手招きをしてそういった。
「うむ。では失礼する」
「そ、その・・お邪魔します」
が!やはりこの二人と言うべきか。二人同時に部屋の中に足を踏み出し足同士でぶつかったのだ。
「椿、お前の足が邪魔で入れん。どけ」
「相良。俺の方が僅かに早く入った。優先権は俺だ」
二人の目の間に火花が散る。またも教室での出来事が繰り返されるのか!?
「あーもう、何やってるの!くだらないところで時間使わず入った入った!」
かなめは半ば強引に二人の袖を引っ張り中に入れた。どうやら二人の激突は起こらなかったらしい。
「じゃ、作るから待っててね」
そういうとかなめはエプロンをし、キッチンの方へと向かっていった。待っている間は二人は無言だった。
会話をしようともしない。というよりもこの二人はいつ激突してもおかしくない状況なのだから当然といえば当然か。
そのままどれくらいの時間がたったか。かなめがおぼんに3人前の皿を持ってきた。
「はい、今日のメニューはカレーです!ちなみにこの中のどれかは激辛カレーです!」
「激・・・」
「辛・・・?」
「そう、激辛。しばらくの間は砂糖食べても辛いと感じるくらいの辛さです!」
嬉しそうに言うかなめを尻目に二人は青ざめていた。その原因は言うまでもなくカレーであるが問題はその色だった。
(明らかにこれが・・・)
(激辛・・・だな・・・)
三つのうち二つは普通の色だ。見た目、香り共に良い。問題は残りの一つ。色は真っ赤で目に余るほどの唐辛子が乗っている。
そして一番のはこの匂い。嗅ぐだけでも咳き込む。普段催涙弾などでなれている宗介でもむせるほどだった。
「千鳥・・・君は一体何を入れたんだ?俺にはココまで辛くなるとは思えんのだが・・・」
「えっと・・・たしか誰かさんがの何時とかそういう奴とか鷹のツメとか唐辛子とかエトセトラえとせとら・・・」
「問題は・・・誰が食うんだ?これ・・・」
椿が恐る恐るたずねる。
「ジャンケンで負けた奴で良いんじゃないの?」
「そうだな。この状況下ならばそれが最も妥当な判断だ」
「よし・・・いいだろう」
と、この時椿はあることに気がつく。
(待てよ・・・これで上手く相良に食わせれば・・・本来の計画と形は違えど『復讐』になるのか・・?いやしかし
やはり決着はこの手でつけんと・・・)
「じゃいくよー最初はグー!」
かなめが言う。やはりジャンケンは最初はグーがお決まりなのだろうか?
「出さなきゃ負けだよ・・・」
最初はグーのあとのお決まりの言葉。やっぱ出さないと負けになるんだろう。
「ジャンケン・・・」
恐らくポン!というまでの時間は短いはずだ。だが参加者にとってポン!と言われるまでが永遠に思えるのは気のせいだろうか?
かなめ、椿、宗介。三者三様のポーズをとっている。
「ポン!!!」
かなめ・チョキ 宗介・グー 椿・グー
「あ・・・・・」
かなめが絶句する。それと共に宗介と椿も『しまった』という表情をしている。
「あ、別にそんな顔しなくても良いわよ。辛さには慣れてるから。じゃ、食べよ!いっただきまーす!」
10秒後、テーブルに顔を伏せ、若干手先を痙攣させているかなめの姿があった。
「千鳥、大丈夫か!?」
「ち、千鳥!だ、大丈夫か!?」
宗介と椿が顔をのぞかせる。
「だ・・大丈・・夫。食べ終わった食器は・・・流し台に冷やしといてね・・・アタシはチョット・・・休・・・む」
かなめはそのまましずかに気絶した。
「おい!相良!!貴様なんであの時パーを出さなかった!?」
椿が言い寄る。
「それは結果論だ。そしてそれに合わせるならば椿、何故お前こそパーを出さなかった」
「黙れ!貴様のせいで千鳥は・・!!」
椿はかなめに目をやる。右手にスプーンを握り締め目の前には一口手を付けただけの激辛カレー。そして気絶しているかなめ。
「くそ・・くそ・・・!」
「仕方がない。看病は俺がする。椿、貴様はさっさとカレーを食べ帰るがいい」
その言葉に椿は敏感に反応した。
「チョット待て!なんで貴様が看病する!?お前こそ帰れ!」
「椿、お前は医療技術を持っているのか?おれは前にお前のような突っ走りやすいタイプでノリが良く天才的な射撃の腕前を持つ
戦友がそこらに生えていたキノコをマツタケと勘違いし食べて生死の狭間をさまよったときに治療を施した経験がある。
お前にはそんな事ないだろう?素人の治療は闇雲に症状の悪化の進行を早めるだけだ」
「く・・・えぇい!!ベラベラ御託を並べやがって!!所詮はお前は口先だけの能無し野郎か!?」
「少なくとも貴様よりはマシ、だな」
この言葉で椿の怒りは頂点に達した。
「相良ァ!!表に出ろぉ!!今日、ここで決着をつける!!!」
「ふ・・良いだろう。俺も少しは勉強した。『馬鹿につける薬はない』とな」
「その言葉、どっちが適切かこの後分からせてやる!」
そう言うと二人はかなめの部屋を出て行った。一方残されたかなめは時たま体をビクッと動かしながらもいまだにうつ伏せのままでいた。

続く!!


あとがき

やっと椿を出せた・・今回かなめの扱いがひどいですね・・・われながら、と。
今回も1話で決着を付けさせようと思ったら長引いたので次回、という事にしました。
これで計7話でなくなった・・・(多分)
次で宗介VS椿の決着がつきます。どうかお楽しみに!
・・・そういえば椿が言ってた奥義今回名前すら出してないなぁ・・・
最後にこれで一人でも楽しんでくれる人がいる事をココに祈ります。

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