真夏のおもひで? 第5話 byグロ
静かな部屋に四人の人物がいた。
接客用のソファーに三人。向かいの小さなソファーに一人。それぞれ座っていた。
「えーと。じゃあ実施日は・・・ここがいいですね?」
その声の主は机の上にあったカレンダーを指差して向かいにいる人物にたずねた。長い黒髪を腰まで垂らしていた。
「うーん。ちょっと待ってください。確かめてみます。しばしお待ちを」
その人物と話していた着物姿の女将さんは、そう言って奥の部屋へ入っていった。
「はー。なんか堅苦しいのって私あまり好きじゃないのよねー」
先ほどまで女将と打ち合わせをしていた千鳥は、背伸びをしながら文句を言っていた。
「それではだめだぞ。千鳥。」
「それではだめですよ。かなめさん。」
偶然にも二人の声は重なってしまった。
しばらくその声の主、宗介とテッサは顔を見合わせてお互いに驚いていた。二人からの同時の指摘に千鳥はムッときた。
「何よ二人して私に説教!?」
「い、いえ。別にそういうわけじゃ……でも、やっぱり会議などは静粛にやるものですよ」
千鳥の希薄のある声に押されながらもテッサは意見を述べた。
「う~ん。まあそういわれるとそうなんだけど、固っ苦しいのは私苦手なのよねー」
「まあ別にそう固くやらなくてもいいんですけどね。」
「そうそう……ってええ!?」
「そんなに大変でしたか?」
「い、いえいえ、そんな事は」
いきなり女将さんが目の前のソファーに座っていた。どうやら少し前からいたらしい。
「まあそれは置いといて、次の話へ行きますか。」
「は、はい。」
女将さんはあまり気にしていない様子だった。そして打ち合わせ再開。
その後は少々問題(宗介がお茶を持ってきた従業員を襲撃者と間違え撃とうとした事)もあったが、それ以外の問題は特に起きずにとんとん拍子に進んでいった。
ところが話が終わり質問の時間になったら宗介が女将さんにとんでもないことを質問しまくってしまったのである。
「避難経路の地図は首脳方全員分あるか。」
これはまだよかったが、
「この旅館の防御設備は整っているか。」
とか、
「従業員の中に首脳方の命を狙う怪しい者はいないか」
などといった。事を女将さんに聞いていたが
「相良さん。何なんですか、その質問は。」
「ソースケ。なんてこと聞いてんのよ。」
今度はテッサとかなめが重なってしまった。二人は少しの間目を合わせた後千鳥はその場を無理やり終わらすようにこう答えた。
「と、とにかく。もう確認も終わりましたので終わりと言うことでいいでしょうか?後まだ何か伝えたいことでもありますか?」
「ええ、終わりでいいですね……ああ、そういえばひとつだけありますね。」
「なんです?遠慮なくどうぞ。」
女将さんは顔を赤らめてその質問に答えた。
「お布団は三枚くっつけますか?」
●
―――部屋にて―――
「もうなんなのよあの女将さんは、あんな言い方じゃまるで私たちが恋人みたいじゃない」
「あのー。恋人同士って私と相良さんのことですかね?」
「へ?いやまあ、女将さんにはそう見えたんじゃないの?」
「千鳥、俺は”ルイビト”なら知っているのだが、そのコイビ……」
「あー。それルイビトじゃなくて”ルイビィトン”ね。」
「む!?そ、そうだったな。」
千鳥につっこまれて宗介は言葉を詰まらせてしまった。
三人は部屋に戻っていた。あの打ち合わせが終わった後そそくさと帰ってきたのだった。
宗介は”コイビト”と”ルイビィトン”について、畳を見ながら真剣に考えていた。
テッサは自分と宗介が恋人同士に見られたと思いうれしいせいか手を胸の前に組んで天井を仰いでいた。
千鳥は自分と宗介が女将さんには恋人同士に見られたのだと思い顔を赤らめてうつむいていた。
そんな状態が五分ぐらい続いた時部屋にあった電話が鳴った。
ぷるるるるる、ぷるるるるる、ぷるる、がちゃ
「はい。そうです。」
電話に出たのはテッサだった。
宗介と千鳥はまだ考え事をしていた。
「はい……はい……了解しました。えっ?……いや、別にそんな……ああ、切れちゃった……。相良さ、きゃあ!」
振り返ったテッサのすぐ後ろに千鳥が仁王立ちしていた。
「あ、ごめん脅かしちゃったわね。で、何て言ってたの?」
「えっと……風呂の終了時間が近いから入るなら早く入ってください。だそうです。」
「う~ん。今暇だしすぐに行くか。宗介も早くしないと風呂は入れないわよ。」
今まで考え事をしていた宗介は
「む、了解した。俺も少ししたら行く。先に行っててくれ。」
●
―――風呂にて―――
チリンチリーン、チョロチョロ、リーンリーン。
風鈴、お湯の落ちる音、鈴虫の鳴き声などのいろんな音が二人を包んでいた。
千鳥とテッサは隣同士で湯船に浸かっていた。そこは露天風呂だった。終了間近なせいか千鳥とテッサしかいなかった。
「あ~気持ち~。夏の夜ってかんじよねー」
「そうですね。こういうのって落ち着きます。」
しばらくの間二人はその音を聞いていたが、それはテッサの一声により破られた。
「あのーかなめさん。」
「ん?どうかした?」
「えーと……じゃあ単刀直入に聞きます。相良さんの事あなたは好きなんですか?」
「へ!?」
急にものすごい質問をされたので千鳥は固まってしまった。しかしそんなことも気にせずにテッサは続けた。
「ちなみに私は彼が好きですがあなたも相良さんが好きと言うことに現在なっていますが私は諦めたわけじゃないし基地でよく話をしてる分勝機もかなりあると思っていますから今回この旅館であなたを抜いて相良さんともっと仲良くなって彼を私の方に向けさせてみます。実は今回私がここに来た理由は相良さんと仲良くなるためだったんですよ。しかしあなたがいたから少しショックでしたが、前々から白黒ハッキリしたいと思っていました。今夜決着をつけましょう。覚悟しておいてくださいね?」
テッサが一息で宗介のことについて一気に言ったのを聞いて、
「わ、私だってソースケの事はこの際ぶっちゃけると好きだったりするからテッサなんかにそうやすやすと渡す気はないし普段学校からいつも話したりしているから負ける気はないわ。いいでしょうその宣戦布告受けてたとうじゃないの。もしもあたしが勝ってもいいわけはなしよ?」
「いいでしょう。それじゃあシャワー浴びて部屋に戻りましょう。」
「わかったわ。」
その頃宗介は男風呂にカメラやらちゃっかりリモコン式の爆弾も仕掛けて
「うむ。問題ないな……そろそろ部屋に戻るか……」
などとのんきなことを言っていた……
続く
あとがき
長々とすみませんあと一話で終わります。少しお待ちを。今回なんかすごいことになりましたね。さあ、テッサと千鳥の声の行方は?宗介の運命は?こうご期待。
後、関係ないですがふもっふ(DVD)ついに発売しましたね。みんな買おう!いいですよ!(宣伝だな……)
それじゃあ、また。