ホスピタル・パニック! 第2話 by 量産型ボン太くん
宗介と速見が病室にいると、突然外から地を揺るがす爆発音が聞こえてきた。
「相良くん、今の音は?」
速見が不安そうに聞くと宗介は平然と答えた。
「心配ありません。庭に仕掛けてある対人地雷が爆発しただけです。」
「じ…地雷だと?」
「肯定です。どうやら侵入者のようですが、先ほど言ったようにこの病院には各種トラップが仕掛けてあります。地雷もその1つです。」
宗介が説明し終わると同時にドアを蹴破るようにしてかなめが部屋に入ってきた。
「ソースケ!あの爆発は何?まさかまた地雷とか地雷とか地雷とか……。」
「おちつけ千鳥。あの地雷には人を殺すほどの威力はない。」
「そういう問題じゃないでしょーが!!」
うなるハリセン。かなめは宗介を壁に叩きつけた。
速見は身の危険を感じ始めていた。
「くっ…。なかなか味な真似をしてくれるじゃない。だけどここまでするってことは速見がここにいるのは間違いなさそうね。」
ススだらけの格好となった陽子は多少ふらつきながらも病院内へと入っていった。速見のいる部屋を探すが、なかなか見つからない。陽子は適当に部屋のドアを開けてみた。部屋の中には白衣を着た医師がいる。椿一成だ。
「ほう…。珍しく果たし状を読んだのか。待っていたぞ相良。」
一成はそう呟くと白衣を脱ぎ捨てた。
「はっ?わたしは相良なんて名前じゃ…。」
「問答無用!!」
一成が陽子に突進する。一成の突きを陽子は脅威的な反射神経で避ける。
「なっ…殺る気?上等じゃない!こっちは連日の張り込みでイライラしてんのよっ!」
陽子は腰からスタン・バトンを引き抜くと一成の頭に振り下ろす。一成も難なくその攻撃をかわす。その時一成の後ろから阿久津万里が声をかけた。
「おめーら何やってんだ?」
一成は万里の方に振り返って叫んだ。
「相良…!いつの間に後ろにっ?まあいい、くらえ!大導脈流究極奥義…臨・死・堆・拳!!」
万里は咄嗟にガードするが、一成の一撃を受けて吹き飛ばされ、機材が置いてある台車に突っ込んだ。機材が音をたてて崩れ落ちる。
「どうだ、相良。思い知ったか!これが俺の実力だ!」
一成は間違いに気付きもせず万里の前で勝ち誇っている。その隙に陽子は部屋から脱出する。
「女の子が相手でも容赦しないなんて、とんでもない奴ね…。あいつも後で取材しなきゃ……。」
陽子が部屋を出ると、復活した万里が一成に文句を言っているのが聞こえてきた。
『てめえ、何しやがる!?』
『すまん。顔がよく見えなかったんだ。』
陽子は足早にその場を立ち去った。
「いい?ソースケ。今後一切地雷とか罠とか使っちゃだめよ。他の患者さんが迷惑するじゃない。」
陽子が一成の部屋から出てきた時、かなめは宗介に罠の使用を禁じていた。宗介はしぶしぶながらも了承した。
「分かった。罠を使うのはやめよう。」
「ようやく分かったようね。」
「ああ、つまりこういうことだろう。これからは罠などというまわりくどい事をせずに、こちらから出向いていって一気に殲滅しろと…。」
「少しは穏便に解決しようとは思わんのかー!!」
かなめは宗介にジャイアントスイングをかけると、そのまま窓の外に放り出した。
速見はベッドの中で震えていた。
陽子はひたすら速見の部屋を探していたが、部屋のドアを開けるたびに変な医者と遭遇してしまう。
「ここかしら…。」
陽子は少し扉を開けて中の様子を覗いた。中には医者らしき人物が患者らしき人と向かいあって何か話している。医者はこんなことを言っていた。
「あなたが気に病むことは何もない。なぜなら人間とは複雑で矛盾にみちた存在であり、人間を人間ならしめているのは(中略)……善と悪との合金としての存在を分かつ亀裂とも呼ぶべきものは深く人間の精神に作用し、それは収容所での生活にも見出すことが出来る。また、ローレンツの言葉を借りるなら(中略)ということです。すなわち現実の個物はつねにエイドスに向かう運動手段としてのみ(後略)」
陽子は静かに扉を閉じて、何も見なかったかの如く再び歩き始めた。
そしてレントゲン室では…。
「おお。すげーなこりゃ。よくこんな近距離で撮れたな…。」
「いい出来だぁ…。さすが危険を冒しただけのことはある…。」
「こ、これはっ!?まさかこんな角度から…。」
「ふふふ…。これは階段を無防備に上る看護婦さんを踊り場で超ローアングルから捉えた力作だよ…。」
さらに警備員室では…。
「野郎ども!俺達の特技はなんだっ!?」
『殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!』
「この警備の目的はなんだっ!?」
『殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!』
「俺達はこの病院を愛しているか!?この仕事を愛しているかっ!?クソ野郎どもっ!!」
『ガンホー!!ガンホー!!ガンホー!!』
陽子はいい加減頭痛がしてきた。
紆余曲折あったが、遂に陽子は速見の病室を見つけた。陽子は勢いよくドアを開けた。
「遂に見つけたわよ!覚悟しなさい。」
強気な陽子に対し宗介は少しも動揺している様子はない。
「ふむ。よくここまで来れたな。と言いたいところだが、後ろを見てみろ。」
「え?」
陽子が後ろを振り返ると、そこには屈強な2人の男が立っていた。
「通報を受けた泉川署のものです。あなたが通報された方ですか。」
男の問いに宗介が答える。
「ああ、そうだ。この女は病院に忍び込んで破壊活動を行っていたのだ。」
2人組の男は陽子に手錠をかけた。
「ちょっと、なんでわたしが捕まるのよ!わたしはただの記者よ。」
陽子は必死に訴えるが、男はまるで信じていない。
「ほう。最近の記者は随分と物騒なものを持っているんだな。」
そう言って陽子が腰にさしているスタン・バトンを指差した。
「こ、これは護身用で…。」
「嘘をつくな。それにこの病院の医師から通報があったぞ。庭で爆発物を使用したそうじゃないか。」
「あれは地雷が埋めてあったのよ!」
「病院の庭にそんな物が埋まってるわけないだろう。ともかく、言い訳は署でしてもらおうか。」
男達は陽子を連れて行く。
「『おはいお屋』のトライデント焼きでも食いながら話を聞こうじゃないか。取調室でな。」
「わたしは無実よ~!!」
そして陽子は警察へと連行された。
その後速見は転院願いを出して林水総合病院を去ってしまった。転院する時、彼はひどく怯えた様子で「こんな病院はもういやだ…。」
と言っていたらしいが…。
「ソースケのせいでまた患者さんが逃げちゃったじゃない。どうすんのよ。」
かなめは宗介を睨んだ。
「病院の安全のため仕方がなかった。それに最後は穏便に解決したぞ。」
「まあ、警察を呼ぶなんてソースケにしちゃ上出来だけど、人に罪を擦り付けるのはどうかと思うわよ…。だいたい、あんなのすぐにバレるんじゃない?あの人が武器なんて持ってないことは調べればすぐ分かるんだし。」
「それは大丈夫だ。あの後すぐにあの女の身元と住所を調べた。そして家に侵入し、証拠物件を置いてきた。抜かりはない。」
宗介は胸を張って言った。
「んなことを誇らしげに語るんじゃねーわよ!!」
かなめはハリセンを袈裟懸けに振り下ろす。乾いた音とともに宗介は吹き飛んでいった。
おわり
あとがき
どうも~。一応これで終わりっす。この話で一番苦労したのは水星先生のセリフです。高校時代の倫理の教科書が初めて役に立ちましたよ(笑
でも苦労したわりにはあまり水星先生のセリフに見えないなぁ…。まあそれはおいといて、名前が出こないキャラもいたので一応説明を。
レントゲン室にいたのは風間達で、警備員室にいたのが郷田達です。セリフを見れば分かるとは思いますが…(汗)そいでわ!