シンデレラ・パニック! ver.TDD-1 by がい
むかしむかしのお話です。
とある国にそれはもう、美しい女の子がおりました。
むっつりとした表情にへの字口。
髪は短く刈り込んでおり、意志の強さが伺える瞳をもっていました。
両親は優しく大変な大金持ちで立派なお屋敷を持ち、何1つ不自由なことのない暮らしをしておりました。
ですが、お母さんが病気で早くに亡くなってしまいます。
嘆き悲し・・・んでるかどうか解りませんが、とにかく悲しむ娘を見てお父さんは新しいお母さんを迎えることにしました。
ですが・・・・新しいお母さんはとにかく性根が悪く、ちょっとしたことでぶつぶつと文句を言い始め・・・とにかく酷い女性でした。
そして、新しいお母さんの連れてきたその3人の娘もまた同様に性質の悪い少女ばかりでした。
なんでそんな女と結婚したのか、それはお父さんが騙されたのか、はたまた天然だったのか・・・・。
それは解りませんが、この母子たちはとにかくお父さんの目の届かないところで女の子に執拗な嫌がらせを続けました。
美しさにひがんで、というか、むしろノリノリで苛めてるといった感じですが気にしちゃいけません。
そして、辛いときには辛いことが重なるもので、今度はお父さんが病気で亡くなってしまいます。
息を引き取る際の言葉が「あれ・・・は、ボルシチじゃ・・・ない・・・。」でした。
そしてお父さんが亡くなってすぐ、継母は女の子の持ってるドレス、部屋・・・・全てを取り上げ、自分のものにしてしまうのです。
女の子はボロボロの服のみ与えられましたが、耐えるしかありません。
毎日辛い仕事と粗末な食事ばかり。
そんな毎日を過ごす内、かまどの灰で女の子の髪の毛は汚れ、「シンデレラ(灰かぶり」と呼ばれるようになりました。
こうして、シンデレラは辛く悲しい毎日を送っていたのです。
「さが・・・・ではない、シンデレラ!」
「はっ!なんでありましょうか、中佐殿・・・じゃなくてお母様!」
継母が叫ぶなり、シンデレラは背筋をピッと伸ばし敬礼をします。
「シンデレラ・・・私は君に、先ほど何と言ったか・・覚えているかね?」
「はっ・・・・まず、屋敷を隅々まで掃除、その後洗濯と。」
「ふむ・・・・で、君は今洗濯の支度をしているのだな?」
「肯定であります、サー!」
「では、これは何かね?」
といいつつ、継母は窓の端っこを人差し指で「つーっ」となぞります。
そして指先にはうっすらとですが、ゴミが付着していました。
「はっ・・・これは・・・・」
「君は掃除の仕方を知らんと見える・・・これは、再教育のが必要性があるな・・。」
それぐらいのゴミが残るのは仕方がないといえますが、そんな言い分は通用しないようです。
うろたえるシンデレラを冷たい目で見据え、継母は続けます。
「娘たちよ・・・もう1度シンデレラに掃除の仕方を教えてやるのだ。」
「はい、お母様」
と、3人の娘が現れました。
何故か髭が生えていたり、スナイパーライフルを持っていたり、ドレスに「FLT」と刺繍されたワッペンが縫い付けられたりしていますが・・・。
一応、娘です。
やれっ!と継母が叫んだ瞬間、3人の娘がシンデレラに襲い掛かってきました。
「すまん、宗介」
「まあ・・・耐えろ、軍曹」
「ぷっ・・・くくくっ・・悪りぃな、ソースケ」
どかっ!ずげしっ!ごすっ!ごすっ!どすっ!
「かはっ・・・・」
・・・・なんか好き勝手言ってますが、すまないとか言ってる割には3人ともノリノリで殴ったり蹴ったりマウントポジションを取ったりでやりたい放題でした。
「う・・・くっ・・・」
ぼろぼろのシンデレラを見下ろし、継母が呟きました。
「ふん、なんでお前のような輩に大佐が・・・・・いや・・・」
「・・・・?」
なにか、ぶつぶつと呟いていますが、シンデレラには何のことかよく解りません。
「まあ良い、掃除の仕方がわかったのならもう一度最初からやり直せ。わかったな?軍曹。」
「い・・・イエス、サー」
掃除の仕方を教えたかどうかはともかく、ちょっと素の部分が出たのは内緒です。
「ところで、気になるのですが・・・今日の夕食は?」
「ふん、今日は必要ない。というか、いつものあれは本当に食事なのか?生ハム1切れにトマト1つ、砂糖と塩を1つまみなど・・・」
シンデレラの用意する食事はなにか侘しいものがあったようです。
「まあいい。今日はお城で舞踏会があるのでな。夕食は1人で済ませておくが良い。」
「はっ。」
本来ならここで(私も行きたいなぁ・・・)と思うのですが、このシンデレラにはそういった概念が在りませんでした。
(舞踏会・・・・・踊って飲んで食べるだけの行為に何か意味があるのか?財政をひっ迫させるだけだろうに・・・金持ちの考えることはわからんな。)
・・・随分間違った思考能力のようです。
「さて、娘たちよ、そろそろ支度をするのだ。いいか、必ずや大佐・・ではなく、王子のために。(ふん、このような生活能力すらないような男に、いやそもそも(以下略)」
「・・・はっ(すまん宗介・・・だがこれも任務。悪く思うな」
「イエッサー!(ふう・・・・これはこれで中々面白いが・・・・早く切り上げたいものだ。ト○ロが俺を待っているというのに)」
「くくく・・・いや、駄目だ、笑いが止まらねぇ・・・まあソースケ、そういう・・・ぷっ、あっはっはっは」
こうして性悪な母と娘たちはその場を去っていきました。
「では軍曹、行ってくる。夕飯は適当に済ませておけ。以上だ。」
「ははっ。」
継母はシンデレラにそう告げ、3人の屈強な娘たち馬車に乗り込みお城へと向かいました。
シンデレラも敬礼の姿勢をとったまま馬車の姿が見えなくなるまで立ち尽くしていました。
「ふう。さて、洗濯の用意をせねば・・・・。」
と、屋敷の中に入ろうとした瞬間。
「待ちなさいっ!」
誰がが叫びました。
「む・・・・?」
振り向くシンデレラ。そこには艶のある長い黒髪、ほっそりとした整った顔立ち。少々切れ長の目・・・
美少女と言っても差し支えのない少女がとんがり帽子と、真っ黒なコートを羽織り、ハリセンを片手に立っていました。
ハリセンは杖のつもりかもしれません。
「あんたねぇ・・・・そこで素直に「洗濯をせねば」って言う?フツー言わないわよっ!?」
「いや、しかし下士官としては当然―」
すぱんっ!すぱんっ!すぱんっ!
少女はハリセンでシンデレラの顔を往復連打します。
「痛いぞ千鳥。」
「やかましいわっ!てか、あたしの格好見て何も思わないのアンタは?話の流れからして「あなたは誰?」とか尋ねるでしょ。あと千鳥ってゆーなっ!!!」
「そういうものなのか・・・・。あなたは誰?」
何故か棒読みでシンデレラは返しました。
「・・・は~・・・・。ま、良いわ。ホンットに大根役者なんだから・・・んんっ。あたしは魔法使いのカナメ。」
シンデレラとの会話で少々疲れたのか、魔法使いはげんなりしつつ自己紹介しました。。
「あんたを舞踏会に連れて行ってあげるわ。とっとと支度しなさい。」
「?いや、俺は別に・・・」
すぱしっ!
「だから痛いと―」
「だ・か・ら!話の流れを読みなさいよ!あんたが「行きたい」って言わないと話が進まないのよっ!あ~っ!もう!あんたの意思は却下!ちゃっちゃと先に進めるわよ!いい!?」
「・・・了解だ。」
凄まじい剣幕で囃したてる魔法使いに、シンデレラもたじたじです。
「で。とりあえず、馬車とか御者とかドレス・・・あと招待状(偽造)作るのに材料を用意しないといけないのよね。」
「ほう。」
「ほう。じゃないわよ全く・・・。えーと、確かヤモリとネズミ・・あとかぼちゃだったかしら?」
「・・・・その3つでないと駄目か?」
「え?」
「いや・・・そのなんというか。今言った材料は・・・ここには無くてな。」
「んなっ!?」
なんということでしょう。シンデレラは材料となるものはここには無いと言っています。
「ちょっ・・・・どーすんのよ!?それじゃ馬車も御者も・・ドレスと招待状も作れないじゃないのっ!!なんで無いのよ?」
「うむ、実を言うとここは「トゥアハー・デ・ダナン」という潜水艦の中でな。今はメリダ基地に停泊しているので地上ではあるが――ゴキブリ一匹も存在しないのだ。」
「・・・・随分ちっぽけな国ね・・・。」
魔法使いはがっくりと肩を落としつつ呟くことしかできませんでした。
「でも、それでもかぼちゃくらいならあるでしょ?」
「かぼちゃは傷んでいたのでコックが捨てたらしい。」
「あ・・そう・・・・。」
「すまん。その代わりにトマトとハムが1切れずつなら。」
「トマトはともかく、ハムを一体何に変えるって言うのよ・・・・?」
「・・・・むぅ。」
さすがにシンデレラも返す言葉がありません。
「もう、こうなったら・・・・」
魔法使いは疲れきった表情で話します。
「まず屋敷に入るわよ。」
「ふむ、しかし、屋敷に入っても材料は無いのだが。」
「端折るわ。誰にも見えない場所で、材料があったということにして、魔法が成功したことにするの。いいわね?」
「あ、あぁ・・・。」
そして2人は屋敷の中に入っていきました。
その後、ハリセンで何かを叩く音、悲鳴、怒号などが数分間ほど屋敷の内部から聞こえていましたが―――その声がすっと途絶え、シンデレラと魔法使いが屋敷から出てきました。
「ふぅ。まあこんなもんでしょ。」
「ぬ・・ぅうう・・・・。」
なぜかシンデレラが疲れ切った表情をしていましたが気のせいです。
ですが、先ほどまで着ていたぼろぼろの服ではなく、煌びやかなドレスを着ていました。
「・・・似合ってないわね・・・ま、まぁ良いわ・・・。でも、ドレスと招待券はともかく、馬車がね・・・。」
「ではこれで行く。」
シンデレラがどこからか手榴弾を取り出しました。
「・・・・これを何の目的で、どー使うわけ?」
「安心しろ、これは魔法のパイナップルだ。これは火薬は入っていない。魔法の音と光で目的地まで一気に移動できる。」
「なんで魔法使いじゃないアンタがそーいうの持ってるのよ・・・?」
「気にするな、では行くぞ。」
「え?」
魔法使いが返事をする前にシンデレラは魔法のパイナップル(?)のピンを外しました。
「ちょっと!待ち―――」
そして、魔法のパイナップル(?)は爆発しました。
魔法使いの悲鳴とともに・・・。
「えほっ、げほっ・・・・うぅ、なんでこんな目にあうのよー・・・って、ここ・・・」
「うむ、城のすぐ近くのようだな。」
どうやら魔法のパイナップル(?)はしっかりと効果を発動したようです。
「ま、まぁいいけど。じゃあ、あたしは、ここで失礼するわ。」
「何故だ?一緒に行けばよいのではないか?」
「招待状(偽造)は1枚だけでしょ?それにあたしドレスなんてないし。」
「そういうものなのか。」
「そーいうもんなのよ・・・・じゃあ行ってらっしゃい。せーぜーテッサと楽しんでくれば?」
「あ、ああ・・・」
なにか最後の一言が辛辣な感じがしましたが、とにかくシンデレラは城へと歩き出しました。
「あ、ちょっと!」
「む?」
魔法使いが呼び止めます。
「言い忘れてたけど。魔法は0時になったと同時に効果が無くなるから。それまでに城を出るのよ?」
「そうか、忠告感謝する。」
シンデレラは魔法使いに敬礼し、そして今度こそ城へと向かっていきました。
「全く・・・・本当にわかってるのかしら・・・?明日古典の補修があるってゆーのに・・・・。」
お城の大広間には思い思いに着飾った屈強な娘たちで溢れていました。
この機会に王子様と仲良くなりたいと話し掛ける者、酒を飲んでくだを巻く者、さまざまです。。
大広間には静かな音楽が流れていました。
何故か大広間の端っこにMDラジカセがありましたが。
「ふふっ、皆さん楽しんでるようです。」
テッサ王子が嬉しそうに微笑みつつ、側にいる王様に話し掛けます。
アッシュブロンドの髪を後ろに結い上げた線の細い、魔法使いのカナメとはまた違った意味での美少女です。
だぶだぶの服を着て、玉座に「ちょこん」と座っています
王子なのに美少女ですが、それは気にしたら負けです。
「そーぉ?なんかどーでも良いんだけど。」
王様はショートの黒髪、少々大きめな・・・猫のような目をした美女でした。
王様らしく豪華な服を着ていますが、胸元は大きく広げられ、どちらかといえば楽な格好でバドワイザーの缶を片手に玉座であぐらをかいています。
美女なのに王様ですが、これもまた気にしてはいけません。
「あんたも物好きよねぇ・・・で、さっきから何ソワソワしてるわけ?」
「え・・・ソワソワだなんてそんな」
「ふーん?じゃあここでお開きにしようか?
「・・・・メリッサの意地悪。」
王様の冗談を真に受けて王子様はぷーっとふくれます。
「ふふ、冗談だって。あと、メリッサじゃなくて王様、でしょ?」
「ふふ、そうですね。」
「ま、それはそれとして。一応これ、あんたのお嫁さん探しが目的でしょ?いいの見つかった?」
「ええ・・・そうなんですけど。どうもいまいち・・・。」
何人もの女性が王子様とお近づきになるべくアタックをしていたのですが、王子様はどうもしっくりこなかったようです。
「ふーん・・・めぼしいのいないの?さっきの4人組とかどうよ?」
「・・・1人目は「大佐!あんな生活能力と甲斐性の無い男などもってのほかです!私の親戚の(以下略)」とか説教してきますし。」
「あー・・・・・。なんか説教されてたっけ・・・。」
「2人目は「大佐、また新作のボルシチを作ってみたのですが・・・試食していただけませんか?」と言いつつ何かの入った鍋そのもの持って来ましたし。」
「・・・・・あー・・・・あれ?なんか匂いとか味以前に色がおかしかったでしょ、あれゲテモノ以外の何者でもないわよ?」
「王様は食べてないじゃないですか・・。」
「食えるわけ無いでしょあんなの。」
「それを食べる羽目になった私って・・・。3人目は「ビデオを見る時間を削っちゃってごめんなさい」って謝ったら「うぁああぁああぁぁっ!!」って叫びつつどこかに走り去っていきましたし。」
「何のビデオよ・・・まあ、クルツが見るようなタイプのじゃないでしょうけどね、あいつ堅物だし。」
「それは秘密です・・・4人目は「テッサちゃぁああん」とか言いながら私に抱きついてきて、王様にしばき倒されましたし。」
「・・・・あれは自業自得よ。」
「まあ、そうですけどね・・・・。知り合いとか友人ならともかく、ちょっと・・。」
王子様は深いため息をつき、王様は新しいバドワイザーの缶を開けていました。
「ま、いいんじゃない?さっき余りにうるさいからって、営倉ぶちこんだのあんただし。」
「・・・命令しただけです。」
なにか不穏な話をしていると、突然大広間が静かになりました。
(おい、あれ・・・・)
「あ、ああ・・宗介だよな・・・)
(ぷっ・・・・・人の事いえないけど・・・似合ってねぇ・・・・)
そう、われ等がシンデレラが到着したのです。
最も―――すぐにそこらへんの席に座って「トマトを1つくれないか?」などと言っています。
「・・・・・。」
「あいつ、やっぱよく解ってないわね。」
王子様は、ぽかんとなってしまい、王様は「ああ、やっぱりな」って感じでした。
「ほら、行ってきな。あんたから言わないと多分、あいつ素でトマトかじって帰るだけよ?」
「う・・・それは困ります。」
「でしょ?ほら、頑張りな。」
そう言って王様は王子様の背中をぽんっと押し、シンデレラの元へ行くよう促します。
そして、何かを決意した表情になった王子様はシンデレラの座った場所へゆっくりと歩いていきました。
「あの・・・・さが・・じゃくって。お嬢さん、あなたの名前を教えていただけますか?」
とても優しい・・・社交辞令ではなく、大切な人に接するかのような澄んだ笑顔で王子様はシンデレラに問いかけます。」
「はっ。シンデレラ軍曹であります。コールサインはウルズ・・・・」
勘違いした答えが返ってきましたが、王子様はそれを「うんうん」と聞いていました。
そしてシンデレラの自己紹介が終わりました。もちろんシンデレラは敬礼しています。
「ふふっ・・・ではシンデレラさん。宜しければ・・私と踊っていただけませんか?」
「はっ。しかし・・・」
シンデレラが口ごもります。
「どうかなさいました?」
「はっ。実は・・・自分は踊りというものを知りません。大佐の邪魔になるだけではないか、と。」
何故か敬礼をしたままシンデレラは喋ってます。
「うふふ・・・・では私が教えて差し上げますね♪あと、私は大佐じゃありません、王子ですからね?」
「はっ!?いえ・・・しかし」
「さあ、参りましょう・・・。」
うろたえるシンデレラの手を恭しく取り、王子様は大広間の真ん中へと進んでいきます。
そして、また新しい曲が流れ始め二人は踊りだしました。
それは王子がシンデレラを手取り足取り・・・ダンスのレッスンをしているような感じでした。
それは優雅でもなければ軽やかでもない、ダンスというのもおこがましいような、そんな足取りでしたが―――
ですが王子様はとても嬉しそうでした。
「はい、ここで一度離れて・・・。」
「こ、こうでありますか!?」
などと、見ていると滑稽な動きにも思えました。
シンデレラはあたふたと動き、なんとか王子様についていけるよう頑張っているようです。
「シンデレラさん・・・私、すごく嬉しいです・・・。」
「は・・・?」
「だって、こんな近くで相良さんの息遣いと暖かさを感じられるんです・・・・。」
「あの、王子様・・・・自分は相良ではなくシンデレラです。」
「ええ、解っていますよ、相良さん・・・。」
嬉しさのあまり全然人の話を聞かない王子様でした。
そして王子様はシンデレラの顔をじっと見て・・・そして、腕をシンデレラの首に静かに巻きつけ、そっと目をつぶりました。
「・・・・・相良さん・・・・」
「う・・・・あ・・その、大佐殿・・・。」
「駄目、テッサって呼んでくれないと・・ふふっ。」
シンデレラはとーーーーっても後ろめたい気持ちになりました。
しかし突然。
「ちょっと待ったぁぁああああぁぁあああっ!!!!」
「!?」
「え・・・?」
その大広間に何故か魔法使いのカナメが衛兵をハリセンで蹴散らしつつ乱入してきたのです。
「ソースケ!あんた何やってんのよ!?こんなことやってる場合じゃないわよっ!」
「いや、俺はシンデレラだ。」
ばしぃっ。
「痛いぞ千鳥。」
「そんなのどうだっていいわよ!てかテッサ!あんたもどさくさまぎれに何やってんの?今・・その・・・キ・・キキキ・・キ・・キス・・しようとしてたでしょ!!!」
「濡れ衣です!大体、そんなのカナメさんに関係ないでしょう!?もしそうだったとして何か問題があるんですか?」
「うっ・・・・で、でも!」
王子様も魔法使いも何かどんどん暴走してるみたいです。
「千鳥・・・ところで今、そんな場合じゃないと言ってなかったか?」
「あっ・・・そう!そうなのよ!ソースケ、あんた明日補修があったでしょ?」
「補修?」
「あー・・・やっぱ忘れてるわけね・・・。」
魔法使いはやっぱり・・という感じで呟きます。
「相良さん?補修って?」
「古典の補修。あんた小テストの成績悪かったでしょ?」
「!!!!」
シンデレラの表情がいっぺんに凍りつきます。
「・・・・今0時20分前。今から東京帰れば明日の7時ごろには着くでしょ。輸送機の中で古典教えてあげるわよ。これ以上単位落とすとマジやばいわよ?」
魔法使いは古典の教科書とノートを持って言いました。
用意が良いようです。
「・・・・・・・」
「あ、あの・・相良・・・さん?」
「申し訳ありません、大佐殿。解ってください。これ以上単位を落とすと進級できないかもしれません。」
「え?」
「ほら、早く帰るわよ、ソースケ!早く着替えなさい!あと荷物も忘れないでよ?」
「そんな!横暴です!もう少しで・・その・・・相良さんと・・・。」
「やっぱりそーいう魂胆があった訳ね?」
「うっ・・・。」
そこに王様がやってきました。
「あのさ、なんか話がよくわかんないんだけど?」
「あ、メリッサさん・・・。実はですね、この馬鹿が古典の小テストで赤点ばっか取り続けてるもんで・・・・単位がまずいというか・・下手すると進級できないかもしれないんです。」
「はぁ・・・そんな状況でなんでこんなことやってたの?・・・まあいいわ。早く行きなさい。ソースケが着替えて、飛行場まで行く間に輸送機とパイロット、スタンバらせとくから。」
「メリッサ・・・あなたにそんな権限が」
「私は王様なの。王様の命令は絶対なの。OK?」
「そんな、無茶苦茶な・・・。」
「テッサ・・・あんたの我侭でソースケ落第しちゃったらどうするの?かなめちゃんとクラス離れたら護衛するのに差支えがあるでしょ?」
王子様はしばらく不機嫌な顔をしてましたが、深くため息をつくと「仕方ありません」と言いました。
「私の我侭で相良さんに辛い思いをさせるのは嫌ですから・・・。」
「はっ。申し訳ありません、大佐殿。」
「はい、ただ・・その・・・。」
「なんでしょうか、大佐。」
「テッサ・・って呼んでくれませんか?」
「は?」
「呼んでくれなきゃ輸送機は出しません♪」
王子様はこんなときまで我侭全開でした。
「・・・・・・テッサ・・・。」
シンデレラが後ろにいる魔法使いの凄まじく冷たい視線に耐えながら辛うじて言いました。
「うふふ、よろしい。では行ってらっしゃい♪」
「アイ・アイ・マム!」
「ソースケ!早くしなさいよ!じゃなきゃ飛行場までドレスのままで連行するわよ?」
「そ、それは困る。」
「だったら光の速さで着替えてきなさい!」
「ああ。」
魔法使いに急かされて、シンデレラは一目散に走っていきました。
大広間を出る瞬間、王子様に敬礼をして。
そして、魔法使いとともに走っていくのでした。
ところで、性悪な母娘たちはどうなったのかと言いますと・・・・
「何故我らは営倉に入れられたのだろうか・・・?理解できん。・・・まさか相良軍曹の差し金で・・・・。」
「・・・マデューカスのおっさんが、テッサにマジ説教かましたからじゃねーのかよ。あと、ソースケがんなことするわけ無ーって。・・・しかし、腹減った・・・。」
「ふむ、ではボルシチを食べるか?」
「・・・・・・・・・勘弁してくれよ。」
(ん?そーいやクルーゾーがいねぇな・・・・。あ、あいつアニメ鑑賞してやがるのか・・・?俺なんてこんなとこにヤロー3人で閉じ込められてるって言うのに)
「なあ、クルーゾーの趣味って知ってるか?」
「む?」
その数日後、性悪な娘同士の醜い戦いが勃発するのですが、それはまた別のお話です。
あとがき
な、なんとか完成ですorz
初めて書いたSSです。
文字が多かったり、意味不明な言葉だったり説明が不十分だったり(汗
あまり面白くないと思われます。
でも少しでも楽しんでくだされば本望(?)です。
この後日談とかの話もあるので、リクエストとかあれば・・なんとかしますorz