終わりの後 第1話 by 紅夜
変わらないと思っていた世界が。
変わって欲しくないと願っていた世界が。
壁が崩れるように崩壊してしまった。
小野寺孝太郎はそう思った。
世界が崩壊したその日の始まりは、普段と何の変わりも無かった。
電車の時間ギリギリに起きて、駅まで猛ダッシュ。泉川駅に着いたら、近くのコンビニに行き朝メシを購入。
そして、陣代高校に行き、相良宗介達との日常が始まると思ったのだが、その日は、相良も千鳥も常盤も休みであった。
今思えば、それが世界の崩壊の予兆だったのかも知れない。
いつもと同じ授業を行っている最中に、突然の放送が起きた。
『テスト、テスト。こちらは生徒会です』
元生徒会長――林水敦信の声が、スピーカーから教室内に響き渡った。
『つい先ほど、北校舎で重大な災害が発生しました』
その言葉で、生徒は疎か担任の神楽坂恵理の顔も暗くなった。全員の頭の中で、
(アイツだ。また、アイツが何かを起こしたんだ)
もう、クラスメイトと言う域を越えたチームワークが、相良宗介のおかげ――なのだろうか、二年四組の中で築かれていた。
何とも笑えない話だ。
教室に居る全員が、席から立ち上がった。全員の眼が殺気に満ち、お互いの腹を探っているようだ。
ガタッ。
千鳥と仲の良いシオリが走り始めた。それが、スタートの合図。まだ、放送が終っていないが全員が、我先にと教室の扉に向かって走り出していた。オノDも風間も。
全員が校庭に避難し終わった時、町から黒煙、爆発、銃声などが起きているのが分かった。
「どうなってんだよ!?」
オノDが叫ぶが、答えられる人間は誰もいない。
爆音と同時に、白い人のような物がこちらに向かってきた。
二年四組以外の生徒は、見たことが無い物であった。
「アーム――」
「アームスレイブだ!!」
オノDの声を遮って、風間が興奮した声で叫んだ。
人体を模したハイテク武器――アームスレイブ。二年四組の生徒は過去に二回、実物を見たことがあった。
一回目は、4月の修学旅行でハイジャックされた時。
二回目は、12月のパシフィック・クリサリス号の時だ。
二度ある事は三度ある。ということわざがあるが、本当に三度目が来るとは誰も思わなか――いや、思いたくなかった。
修学旅行の時も、クリスマスの時も、奇跡的に誰も死んだりはしなかったが、今度も奇跡が起こるとは限らない。今度こそ、誰かが死ぬかもしれない。ド
ジだが本当に他人思いの先生。アーミーオタクのちょっとヤバイ級友。恋に生きると誓った女子生徒。いつもハリセン振り回す級友に、それを宥める級友。
そして、いつも危険な物をもって来る級友。他にもたくさんいる仲間が、死ぬかも知れない。
そんなのは嫌だった。
「オノD!! 何か、マズイ感じだよ」
目の前で二機のASが静かに対峙していた。
続く