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2014.02.20 10:18

恋の協奏曲(コンチェルト) 第3話 by 東方不敗

……あれ……?

……なんだろ、あったかい……

……おんぶ、されてるのかな……?

……あったかい、背中……

……広いし、まるで……

……お父さん、みたい……

「……ん……?」

「……起きたか」

「ふぇ……?」

ぼんやりとした視界。

……あれ、あたしどうしたんだっけ……? なんか、視界がいつもより高い場所にあるような……

それに、ソースケは……?

「かなめ。起きたのか?」

相変わらずのむっつり声。

そして、気付く。

あたしはソースケにおんぶされて商店街を歩いてる事に。

「そ、そ、ソースケっ! あんた何やってんのよっ!?」

「何といわれても、君が眠ってしまったから運んでいるだけだが」

「と、とにかくおろしてよ……。誰か知り合いにでも見つかったらどうすんのよ?」

地面に足をつけながらつげる。見ると良く行く八百屋のご主人さんとかいろんな人がにやにやと人の悪そうな笑みを浮かべてこっちを見てる。

うう、なんか嫌な予感がするなぁ……

「いようかなめちゃん、恋人かい?」

予感敵中。

八百屋のおっちゃんが大声でそんなことを言ってきた。

当然通行人の視線もこっちに集まる。て、元から随分集まってたみたいだけど……

はあ、そりゃ当たり前よね、いまどきおんぶしながら歩いてる高校生なんて普通はいないし……

「ち、違いますっ!」

「はっはっはっ、照れるな照れるな。ちょっと聞いたんだがそこの通りでキスまでしてたそうじゃねえか。いやあ、おじさん見逃しちまったなぁ。はははのは」

「だ、だからアレは……。そ、ソースケっ、あんたもなんかいいなさいよっ!」

「そうだな。確かに事実だ」

すぱんっ!

どあほうの頭を携帯用ハリセンではたく。

「あんたねえっ、肯定してどうすんの、肯定してっ! 変な噂でも広まったらどーすんのよっ!? あたしもう恥かしくてこの辺歩けないわよっ!」

「むう……。しかし、あの老人は紛れも無い事実しか言ってないような気が……」

「はっはっはっ、兄ちゃん老人はひでえなぁ老人は。こう見えてもまだ50代よ」

「そうでしたか。それはすいません」

「いや、いいってことよっ。かなめちゃんは素直じゃねえからなぁ、苦労するかもしれねえがガンバレよっ」

「はっ、全力を尽くします」

「おう、せいぜい尻にしかれねえようになっ。て、もうしかれてるかっ、はーっはっはっはっ!」

「あたしがいつソースケを尻にしいたんですかっ!?」

「いやもう、見た目でそうじゃねえか」

「あ、あのですねぇ……」

ひくひくと頬をひきつかせながらあたりに頭をめぐらす。ううっ、なんかみんなして笑いながらこっち見てるし……

「かなめ……? 顔が赤いぞ。どうした?」

「あんたのせいよ、あんたの」

「? 俺の?」

「あー、もーいいわよっ、帰るわよさっさとっ」

「? りょ、了解」

「おーいかなめちゃんっ、結婚式んときは是非呼んでくれよっ! スピーチはしてやっからよ!」

「死んでもゴメンですっ!」

後ろを振り返って大声で叫んでやる。あーもうっ、これでもうこの辺歩けないわよ……

でも……

八百屋のおっちゃんの言葉が頭の中にかすめる。

結婚、かあ……

ちらっと横を見る。

相変わらずのむっつり顔。夕日に照らされてるせいか、どこかいつもより、格好よく見える。

「? なんだ?」

こっちの視線に気付いたのか、ソースケが怪訝な視線を向けてくる。

「ん、別に。なんでもないわよ」

にっこりと笑いながらそう言ってやる。そして、

きゅっ。

「? かなめ……?」

急に手を握ってきたのに驚いたのか、少し眉をひそめながらこっちに視線を向けてくる。

「たまにはいいでしょ。たまにはね」

あたしはちょっと顔が熱くなるのを感じながら笑いながらいった。

家に帰って夕御飯を食べて、少しの間の談笑。

そのときの話題が商店街でソースケが話したことになった。

つまり、ソースケがギターを弾けるということ。

「でもさ、一体どこでギターなんか習ったのよ? あんたそれに習う暇なんてあったの?」

「ああ、クルツにな。一度ミスリルで隠し芸大会をやる事になって、その時にバンドをやることになって教えてもらった」

「へー……。そういえばマオさんもキーボードとか出来たわよねえ……」

「ああ」

ソファーの上にごろんと横になりながら少しだけ考えをめぐらす。ソースケが、ギターかぁ……。

……あ、そういや……

がばっ。

「かなめ?」

「ソースケ、ちょっと待っててね」

怪訝顔のソースケを放っておいて物置に向かう。ごそごそと中身を探る。

え~っと……、たしか、この辺に……

…………ん? 

あ……!

「あーっ、あったあった!」

思わず物置の中から出てきたそれをひしっと抱きしめてしまう。

うわー、なっかしい……、まだあったんだぁ……捨てたと思ってたんだけどなぁ……

と、そんなことより……

あたしはそれを両手に担ぐととてとてとリビングに戻っていった。それをカーペットの上に座ってたソースケの前まで持っていって、

「……かなめ、これは?」

「何って、ギターに決まってんじゃない」

中学のとき一度だけ使ったアコースティックギター。ず~っと忘れてて物置の中に放りこんだんだけど、ちゃんと残ってたみたい。

「で、弾けるんでしょ? 知ってる曲だけでいいから弾いてみてよ」

ソファーの上に座りなおしながらにこにこと言う。こんな場面めったにないんだしね。

「……わかった。しかし、知ってる曲か……」

「ん~……、別に、なんでもいいよ? 邦楽でも洋楽でもなんでも」

「……そうだな」

おもむろにそうつぶやくとソースケはギターを胸の前まで持ってきた。軽く音の調整を始める。

「……なに、弾く気?」

「……昔の曲だ。いつだったか……、誰かに聞かされた曲。歌詞も覚えていないが……メロディーぐらいなら覚えている」

「……昔って。どのくらい?」

「…………。俺が、まだカシムだったころだったと思う」

そういうソースケの顔が、ひどく寂しげに見えた。

あ……

あたしはよくわからない罪悪感みたいなのが胸をきゅっと締め付けるのを感じた。

だって……

なんだか、聞いちゃいけない事を、聞いちゃったような気がするから……

「……ソースケ」

「……なんだ?」

「……ごめんね」

「……何を謝っている?」

「ううん……。よく、わかんないけど、とにかく、ゴメン」

「……ああ。わかった」

ソースケは一度うなずくと、改めてギターに目をやった。そろそろ、弾く気みたいだ。

「……いくぞ」

「うん」

ぱちぱちと小さな拍手を送る。

ソースケは一度、小さく息を吸うと、ゆっくりと、ギターを奏で始めた。

バラード調の、ゆっくりとしたメロディー。

どこか素朴で、少し寂しげ。

でも……

どこか、温かい感じがする曲。

「……るー、るー……」

気付いたらギターの曲調に合わせるようにあたしはハミングしてた。

知らない曲だから、タイミングとかもなかなか合わない。少し音が外れたりもする。

でも、

今のあたし達にはそれで充分だった。

曲が終わるまでの少しだけの間。

ささやかな、二人だけの演奏会が続いていた。

「…………」

曲が、終わる。

ぱちぱちぱち。

ソースケの方を向きながら拍手をしてやる。

「うん、上手じゃない。それなら充分通用するわよ」

「そうか……?」

ぽりぽりと頭を掻きながら視線を下に向けるソースケ。

あ、照れてる。

変な奴。

「でもさ……」

「?」

ソースケが視線をあたしに戻す。

「……なんかさ、かっこよかったよ、今のソースケ」

「……? 俺がか?」

「うん、いっつも銃振り回してるときなんかよりも、何倍もね」

「……そうか」

「ほんと、いっつもそうだったらいいのにね、あたしの苦労も少なくてすむし」

からかうような口調で言ってやる。ソースケはむっと眉をよせてから、バツが悪そうに、

「それは……、努力はしてる」

「努力しても、結果が出なきゃダメなのよ、わかる? 戦争だろうとなんだろうとそうでしょ?」

「……わかっている」

心なしか肩を落としながらソースケ。

ありゃ、ちょっと言いすぎたかな……?

あたしはソファーから降りるとぽんっとソースケの肩を叩いてやる。

「ま、それがソースケなんだし。急ぐ必要もないでしょ?」

「……かなめ?」

「時間はたっぷりある。これから治していけばいい、そうでしょ、違う?」

来年はあたし達は受験がある。

高校生活が終われば、ソースケの任務がどうなるかなんてあたしにはわからない。

「……ああ、そうだな」

でも、これだけはわかる。

どれだけ時がたっても、普通な生活じゃなくても、コイツの隣にはあたしがいて、あたしの隣にはコイツがいる。

それは、わかっていること。

「……ソースケ……」

ちゅっ。

「……かなめ?」

ちょっと不意打ち気味に、ソースケのほっぺにキスをしてやる。

と、なんだか今まで自分がやってたことが恥かしく思えてあたしは慌てて立ちあがった。そして、取り繕うように、

「あー、な、なんかつかれちゃった。あたし、お風呂入ってくるね」

「? あ、ああ……」

ぽけっとしてるソースケを放っておいてあたしは足早にリビングを去っていった。

あー、なんかつかれた……

ぺちぺちと熱くなってる頬を叩きながら自分の部屋に行き、パジャマをクローゼットから引っ張り出す。

にしても……

ふと頭の中に考えがよぎる。

ギターはこれでいいとして……ヴォーカルは一体誰にすりゃいいのかしら……?

続く


あとがき

ども、東方不敗です。

なんだかゆっくりまったりと物語が進んでます。まーたまにはこういうのも。アットホームなフルメタ、て感じで。しかし長くなりそうです。

このままの流れで行くとどうなるか……ちょっと書いてみますと。

第4話『登校編~昼休み』→第5話『メンバー集め』→第6話『練習』→第7話『やっぱり同棲編』→第8話『多分この編が中核になるんじゃないかな編』→第9話『ラスト』

……うわ。

なんだかホントに10話分ぐらいありそうです。うーん、最後まで読んでくれる人いるのかな……(^^ゞ


★…さりら’s感想…★
うわぁ。同棲だぁ。うわぁ。いいなぁ(笑)
つーかどうなのよこの2人は?進展してるわけ??
そっちばっか気になってしょうがないダメなさりらです(^^;
いやー、ほんとボーカルは誰になるんでしょー??

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