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2014.02.20 10:18

恋の協奏曲(コンチェルト) 第4話 by 東方不敗

……ちゅん……ちゅんちゅん……

遠くで小鳥のさえずる声が聞こえてくる。

「……んー……」

布団から頭と手だけ出して目覚ましをがっしとつかむ。

「……ふぁ……。う、ねむ……」

春の陽射しが心地よい。

できればこのまま寝てしまいたい気分だけど、あいにく今日も学校があるんだ。

「……えっと……今の……時間は……」

ぼや~っとした視界で目覚ましの指す時間を見る。えっと……

『8時58分』

…………

たらり(冷や汗が流れる音)。

「…………え?」

がっしと目覚ましをつかむ。布団からがばっ! と起きあがって一度ごしごしと目をこすってみる。そして、もう一度凝視。

『8時58分』

現実は無情だった。

「…………」

しばらく、あたしはぼおっとその時計を呆然と見つめていた。

そして、息をすう~っとすいこむと、

「遅刻よぉ――――――っ!」

大声で叫んだ。

5分後あたしとソースケは制服姿で朝っぱらの通学路を疾走するハメになった。

「ああもうっ、起きてたんなら起こしてくれたっていいじゃないっ!」

「しかし君があんまりにも幸せそうに寝てたから……」

「だからって遅刻確定時刻になるまで寝かせるなっ!」

「……俺が思うに君が自分で起きればよかったんじゃないのか?」

「うるっさいっ! こーいうときは男の人がやさしく、えーと、そう、アレな感じに起こすってのが定番なのよっ!」

「なんの定番だ?」

「決まってるでしょ? ほら――」

「…………」

「…………」

「……だから、なんなんだ?」

「う、うるさいっ! とにかく走るっ!」

顔が熱くなるのを感じながら叫ぶ。

「? よくわからん……」

「わかんなくてもいいのっ! ええと、このままならなんとか間に合いそうね……」

「2時間目にな」

「うるさいっ! せっかく現実逃避してるのにっ! 黙って走るっ!」

「現実逃避はよくない……いや、了解」

あたしがハリセンを取り出したのに気付きソースケは口をつぐんだ。ふんだっ、起こしてくれなったバツよ。

あー、でも……ソースケがアレな感じに起こしてくれることって、あるのかな……?

恋人みたいに……

ほら、その、よくあるあんな感じに、鼻つまんで、キスして、『朝だぞ』って、あー、う……

「……かなめ?」

「……あ? な、なに?」

「顔が真っ赤だぞ」

「へ? あ、え、えと、その……な、なんででしょーね? うははは」

顔が余計に熱くなるのを感じながら『うははは』と笑う。

そんな風に話してたからか。

どうにも前方に対する注意が足りなくなってたみたいだ。

で、気付いたときには目の前を小さな子供が歩いていた。

「かなめっ!」

「へ……? あっ、や、やばっ……」

気付いたときには避けるのには近づきすぎていた。あたしもなんとか体をひねるが、それでも子供からは完全に体をはずす事ができない。やばい、あたる――!

そう覚悟し、目をきゅっと閉じたとき、

どんっ!

「……へ?」

何かに横に思いっきり突き飛ばされた。

そして気付いたときにはすぐ横であたしたちと併走するように流れてた川に向かって落下してた。

「なんでよぉぉぉぉぉぉっ!」

ぼちゃーんっ!

叫び声がむなしく響いた。

鞄だけは道路に向かって放り投げる事ができたのが唯一の救いかもしれない。

「けほけほっ、い、一体何が……?」

びしょぬれになりながら川から這いあがるとそこにはむっつり顔のソースケが立っていた。

「無事だったか」

「……ソースケ……一つ聞きたいんだけど……」

「なんだ?」

「さっきあたしの事川に突き落としたのって、あんた?」

「そうだ」

「……なんで?」

ひくひくとこめかみをぴくつかせながら……それでも出きる限り穏やかな口調で聞く。

するとこのバカはなんとこう言ってきた。

「無論、あの子と君の衝突を避けるためだ。君は多少被害を受けたがあの子供は完璧なまでに無傷だ。とどのつまり俺の判断――」

すぱんっ!

「……いきなり何をする」

頭を抱えながら立ちあがるソースケ。あたしはその鼻っ柱にびしいっとハリセンを突きつけると、

「どやかましいっ! あ、ん、た、ねぇ……もう少しマシな助け方なかったの? おかげで朝貴重な時間まで割いて治した髪がぐしゃぐしゃになっちゃったじゃないのっ!」

「しかしあの子は結果的に助かった」

「あたしはぜんっぜん助かってないわよっ!」

「だが無傷だ」

「心にものすごい傷ができたわよっ!」

「いや、それより……!」

そこまで言いかけて、

ソースケは急にだらだらと脂汗を流し始めたと思うとあたしから一気に顔をそらした。

「? ソースケ?」

「……な、なんだ」

呼びかけても、見ようとしない。不審に思い、自分の体を見まわしてみると……

そこで気付く。

制服が濡れてすけて見えちゃってる事に。それに、下着も……えっと、あー、う……

「っきゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「か、かなめ。とりあえずこれを……」

ソースケが制服の上着を差し出してくる。

「あ、ありがと……って、見てんじゃないわよこのエッチっ、スケベっ、変態っ!」

必死に前を隠しながら言う。幸いスカートはすけない生地だったから良かったけど、もしすける材質だったら……

ソースケのくそばか……

「かなめ……大丈夫か?」

ソースケがじ~っとあたしの事を見つめてきた。相変わらずのむっつり顔。

その顔に向かって、あたしはすう~っと息を吸いこむと、こう言ってやった。

「なわけないでしょっ! このバカっ! あんたなんかっ、大っ嫌いっ!」

「へえ……そんなことがあったの」

その後、三時間目の授業にはなんとか間に合ったけど、あたしは制服からジャージに着替えるために女子更衣室でキョーコと二人でいた。

「うん……、にしても3時間目が自習で助かったわ。更衣室使うこともできるし」

「あはは……、確かにね。あ、あと二時間目は英語だったよ。後で教科書見せてあげるから」

「うん、ありがと、キョーコ」

ジャージに着替えて、びちゃびちゃに濡れた制服をハンガーにかける。

「あーあ、中にいれといた写真もびちゃびちゃだわ……」

胸ポケットからまだ新しい写真を取り出してぼやく。

「? 写真って?」

どきり。

心臓が高鳴ったような気がした。

「え、ええと、なんのことかしら? げ、幻聴じゃないのキョーコ? ほらこの学校いろいろ変な電波が飛んでるってうわさあるし、うははは」

写真をさっと後ろに隠しながら慌てて取り繕う。でもキョーコはそれに気付いたらしく珍しいぐらいの反射神経でさっとあたしの後ろにまわりこむと写真をあたしの手からひったくった。

「あっ! ちょ、ちょっとキョーコ返してよっ!」

「うん、ちゃんと見た後でね……。って、これカナちゃんと相良くんじゃないの?」

「うっ、ち、ちがっ、うわよっ、そ、それは、その……」

「……しかもこれってでーとじゃない?」

「ち、違うわよっ!」

顔を真っ赤にして、大声で叫ぶ。でもキョーコはにやりと人の悪そうにほほえむと、その写真をひらひらさせながら、

「素直になりなよカナちゃん、仲良く腕なんか組んじゃって、まるっきり恋人同士だよこれって」

「だ、だからっ、それは、その……」

「ホントの事言わなきゃクラスのみんなにみせちゃおっかな」

「……あ、あんたって奴は……」

頬をひくひくさせながら口にする。あ、後で殺す……

「で、どーなの?」

「……そうよ。……ほら、これでいいでしょ、写真返してよ、大事なヤツなんだから」

キョーコから写真を受け取る。なんか顔が熱い。

「んー、やっとかなちゃんもそこまで行ったんだね。あたしもなんかうれしいよ」

「あ、あのねえ……」

「あ、でもなんか今日は仲悪かったみたいだけど、なんかあったの?」

「し、しらないわよっ」

「……はあ」

「……なによ、その意味ありげなため息は」

「別に、ただ、カナちゃんも素直じゃないなーって」

「はあ? どんな意味よそれ?」

「それじゃ、あたしは先に教室に帰ってるね」

キョーコを追うように更衣室を出ようとする、と、そこで。

「あ、相良くん」

「へ?」

扉を出てすぐ横のところにソースケが立っていた。

「……千鳥」

ソースケがあたしの方を向いてくる。相変わらずのむっつり顔だけど、どうにもまだ見るだけでいらだたしさが出てくる。

「……なによ」

自分でもとげがある口調で返す。

「その……だな。常盤……すまないが、外してくれないか」

「へ? う、うん……」

キョーコが一瞬ほけっとした後教室の方へと離れていく。それを見送った後、ソースケはあたしの方に向き直ると、

「ついてきてくれないか?」

そうとだけいって歩き出した。

「ちょ、ちょっと、あー、もう……」

慌ててソースケの後を追う。

その後は互いに何も言わずに歩いていった。授業中の廊下は静かで、静寂だけがあたりにひびいていた。そして、階段を登り、屋上に出た。

今日はいい天気みたいだった。空を見上げれば、時折白い雲が青い空を彩るように流れている。扉を離れて、フェンスのあたりまで来てやっとソースケが振り返ると口を開いた。

「……怒っているのか?」

「……怒ってないとでも思ったの、あんたは? だとしたら最大級のバカよ」

最大限の皮肉を込めていってやる。ソースケは、少しうつむきがちになると、やがてそっとあたしに近づいてきて、ぽんっと肩にてをやった。

「なによ」

そういった次の瞬間。

ソースケに抱きしめられていた。

暖かい鼓動が感じられる。

「……へ?」

思わずそんな声が漏れる。

「かなめ……すまない」

「え? ちょ、ちょっとソースケ? や、やめてよ。ね、ねえ、ちょっと、な、なんで抱きしめてるの? ねえちょっと……」

狼狽して顔が熱くなるのを感じながらもがく。でもソースケは放してはくれない。だんだん顔が真っ赤になってくのを感じてく。ど、どうしよう、な、なんでソースケの奴いきなりこんなことを……

「……俺はいつも君に、迷惑をかけている。だが、覚えていてくれ。俺は君のことを思わなかったときなんて今の一秒だけでないんだ。陳腐な言葉かもしれないが……愛している。君を、心から」

「えっ、え、え?」

な、なんかものすごい恥かしいこと言ってないかコイツ?

ど、どうしちゃったのよソースケ? なんかすさまじく悪いものでも食べたの?

「そう。君は……俺にとって、まさに光りそのものなんだ。その……そう、君は、、まさに戦場での電子妨害ポッドのように、俺のことを常に守ってくれている。俺は君無しでは……きっと、生きられない。だから……」

「あ、あの、そ、ソースケ?」

呼びかけても答えない。ソースケの恥かしさに満ちたまるでイタリア人の口説き文句のような長広舌は続く。

ん……? 口説き文句?

ふととある外人さんの顔が頭の中をよぎる

……まさか。

「だから……そう、俺は、常に君のことを守りたいと思っている。例えこの身が朽ち果てても、君のことだけは守りぬきたい……と、思っている。心から……」

「……クルツさんあたりにでもしこまれたの?」

びくりっ、とソースケが肩を震わせた。

……図星か。

「……な、なんのことだ」

「……あんたね。ソースケがこんな気の聞けた事言えるわけないじゃない。少し考えればすぐわかるわよ」

ぱっとソースケから離れながらあきれたように言ってやる。

「……だが、君は機嫌を治してくれたようだ」

ソースケがあたしの顔を見ながら安心したように言う。

「……ふふっ、そうかもね」

ソースケの言うとおり、何故かいつのまにか今まで心に満ちていたいらつきとか腹だたしさが今じゃすっかりなくなっていた。

いや、何故かじゃないな。

多分、嬉しいんだ。

あたしのためなんかに、なれないことまでして。多分、コイツの事だからクルツさんに『女の機嫌を直す方法を教えてくれ』とでも頼んだんだろう。あたしが着替えてる間にでも。

それで、あんななれないことして……

バカみたい、とも思えるけど同時にすごく嬉しく思える。

あたしなんかのために、そこまでしてくれるってことが……

「……ね、ソースケ……」

ソースケの胸にこつん、と自分の頭をのっけながらつぶやく。

「ごめんね」

いつもの自分からじゃ考えられないような素直な口調でそういう。

「……かなめ?」

「あたしも、ちょっと意地悪だったかな……て、思うから。その……おあいこ」

「……そうか」

「……ね、ソースケ……」

顔は上げないで、でも、精一杯の勇気を込めて言う。

「……キス、したい」

「…………なに?」

「……もう、言わない。聞こえなかったんなら、それでいいや」

大体2度もいったら恥かしさでどうにかなっちゃいそうだ。

と、誰かがあたしの顔をそっとつかんだ。くいっと顔を上げられる。

ソースケの顔が、目の前に移される。

「……ありがと」

そう言って、目を閉じる。とくん、とくんと聞こえる心臓の鼓動。

誰かが近づいてくる感じがする。そして……

がたんがたたがたっ!

唇の感触の前にそんな音が先に聞こえてきた。

驚き、目を見開いてあわてて音のしたほうを向く。と……

「きょ、キョーコ……それにオノD達まで……」

前のめりに倒れた姿勢で、あたしとソースケの方を見てるクラスメートたちの姿があった。風間くんにいたってはデジカメまで準備してる。

「あ、あはは……ご、ごめんねカナちゃん。邪魔するつもりはなかったんだけどね……」

「あー、おっしいなあ……。あとちょっとで世紀のキスシーンが見えたのに」

「でもさっ、やっぱりカナちゃんって相良君とそういう関係だったんだねっ」

「ちぇ……だから風間とか押しすぎだって言ったんだよ。あと一秒おそけりゃあな……」

口々にはやし立てる。

こ、こいつらは……

「あんたらねえ……」

「え、えっと、それじゃあねカナちゃん。あとごゆっくり」

キョーコの声と共に足早にそこを去るクラスメートほぼ全員。

「あとごゆっくりじゃないわよっ! このっ、ばかぁ!」

真っ赤になった顔のまま大声で叫んでやる。

「あー、もう……これじゃいつか同棲してるって話までばれちゃいそうだわ」

頭を押さえてソースケに向き直る。

「……たしかに、そうかもな」

「はあっ……。これでしばらくは笑い者かしらね……」

「……そうなのか?」

「そうなの。ったく、あんなこといわなきゃよかったかしら……」

「あんなこととは?」

「……知らないわよ、バカ」

顔を赤くしてそっぽを向く。たく、このにぶちん……

「……かなめ」

ソースケの声。と、同時に、

あたしの唇と、ソースケの唇が重なった。

「ぁ……」

声にならない声が響く。

触れ合うだけのキス。でも、思いを伝え合うように長いキス。

……ソースケ……

そっと目を閉じて、ソースケの背中に手を回す。

あったかいな、ソースケの体……

3時間目の終わりのチャイムが鳴り響いても、あたしとソースケは唇を重ね合わせていた。

続く


あとがき

書いてる途中に悶絶死しそうになりました(^^ゞ。

いやぁ。くさいセリフって難しいですね、あははー。

ううっ、なんだか書いてる自分の顔も真っ赤になってる気が……

それでは~。


★…さりら’s感想…★
かなめちゃん、寝すぎ(笑)
らしくていいなぁ。遅刻しそうなのに思いっきり会話してるし。
そして最後はお約束な感じで。やっぱみんな見てたのね。(笑)
そしてまた背筋がかゆいですー!(笑)
でもバンドの話はあまり進んでないですね、今回は。
いったいヴォーカルは誰なんだー??

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