Please Kiss Me♪ 第2話 by 東方不敗
ちゅん……ちゅんちゅん……
「……んー……」
……朝……みたい……です……
ごそごそと頭までかぶったシーツから抜け出し、ぴょこっと顔を出す。
「……んー……」
まだ眠い目をこすりながら、ぼおっとあたりに目を回す。カーテンの隙間から柔らかい陽光が漏れて部屋の中に光の線を作っている。明かりはついてないが、その陽光のおかげでそれなりに部屋の中も明るくてらされている。
「…………」
自分の横に視線を移す。まだ微妙に暖かいベッド。どうやら彼は先に起きたみたいだった。
「……なんだか、いつもソースケさんが先に起きている気がします……」
わたしが先に起きる事なんて、めったにないです……
「テッサ……起きたんですか?」
部屋の入り口の方にソースケさんが立っていた。なぜかエプロン姿。料理、してたんでしょうか……?
「……んー、ソースケさん……おはよう、ふぁ、ございまふ……」
そのままぽふっとベッドに突っ伏してしまう。
「テッサ……起きてください。今日は学校ですよ。起きなければ遅刻してしまいます」
「いいです……遅刻しましょう……」
「テッサ……。学校に行きたいといったのはあなたですよ」
……ソースケさん、うるさいです……
「ソースケさん……」
ぐいっ。
「っ!?」
ソースケさんの腕をぐいっとひっぱりベッドの上に押し倒す。
「ソースケさぁん……。今日はー、とっても、眠いんです……。だから、もうちょっと一緒に寝ましょう……」
「て、テッサ……」
狼狽したような声をあげるソースケさん。その唇をキスしてふさいであげる。
「んっ……んうっ!」
「……ソースケさーん……大好きです……」
「テッサ……本当に遅刻してしまいますよ……」
「……いいです。それに、大好きな人とー、走って通学路を走ってくって言うのも、結構定番です……」
「なんの定番ですかなんのっ!?」
……あれ、わたし、何言ったんでしょう……?
うー、眠い……
「テッサっ!」
「……ソースケさん、一緒に寝ましょう……」
「テッサ、起きなければ遅刻しますっ!」
ゆさゆさゆさ。
「……ソースケさん、うるさいです……。またキスしちゃいますよー……」
「い、いえそれは……んっ!」
何か言おうとしたソースケさんの唇を無理矢理ふさいであげる。
ソースケさん……大好きです……
そのままソースケさんの胸に倒れこんで、わたしはもう一度眠りについていった。
すう……
どたどたどたっ!
すっかり日が昇りきった通学路をどたどたと走っていく。
「ソースケさんっ、なんで起こしてくれなかったんですかっ!?」
「起こしましたっ!」
「起きなきゃ起きたとは言わないんですっ! もう10時ですよっ!」
うう、編入二日目から遅刻決定です……
起こしてって昨日頼んだのに……
ちらっと恨めしそうに横で走ってるソースケさんをにらむ。相変わらずのむっつり顔。これだけ走ってるのに息一つ乱してない。
「それにテッサが遅刻していいといったんですっ!」
「いーえ、言ってませんっ!」
「言いましたっ!」
「違いますっ! きっと寝ぼけてたから言っちゃっただけですっ!」
それに、今日の朝の記憶があやふやですし……
なんかすごい事言っちゃったような記憶がありますし……
「……テッサ。じゃあ今朝言った事は全部寝ぼけてたからですか?」
「? わたし、何言ったんです?」
やっぱり、何かすんごいこと言っちゃったんでしょうか……?
あはは……ちょっと不安です。
「……覚えてないんですね」
「あはは……はい。ちょっと、起きたばっかだと記憶があやふやになりやすいもので……」
「確かに、今朝はいつにも増して変でしたね」
「ええ、そーですよね……って、それわたしがいつも変だっていいたいんですかっ!?」
それはちょっと酷いですっ! そりゃあ、ちょっとは普通の子より変ですけど……
「いえ、そんな事は……」
「じゃあなんだって言うんですっ!?」
「いえ、それは……」
言いよどむソースケさん……もう……
ぴたりと足を止める。ソースケさんが足を止めて振りかえる。
「テッサ?」
「……ソースケさん、わたし、そんなに変な子ですか?」
「いえ、そんなことは……」
「わたし、普通の子になりたくてわざわざミスリルを辞めてまでこの学校に来たんです。あなたと――大好きな人と一緒に、普通の学校に通って。普通に生活したかったから……」
「……テッサ……」
ソースケさんが不思議そうに言って来る。ちょっとうつむきがちになりながら、はっきりという。
「……だから、そんな風に言われるの、いやなんです……」
「……申し訳ありません」
「すぐ、謝らないで下さい……。ソースケさんの、悪い癖です」
「……はっ」
ぎゅっ。
そんな音が聞こえたと思ったら、いつのまにかソースケさんに抱きしめられていた。
「……ソースケさん……」
ちょっと顔が熱くなるのを感じながら顔を上げると、ソースケさんがどこか、照れくさそうに……相変わらずむっつり顔ですけど、わたしの事を見つめながら口を開いた。
「……良くは、言えないのですが……。……自分は、あなたのそういう顔を見たくありません。なんというのか、見ると、気分がおちつかなくなるのです……。だから……そう言う顔をするのは、やめてください」
途切れ途切れになりながら、口をつぐむソースケさん。
そんな姿が、どこかおかしくて……
どこか、嬉しくて……
それで、とっても愛しくて……
「……はい」
わたしはにっこり笑いながらそう答えた。
「……よかった」
ソースケさんが、どこか安心したように笑う。そして、そっと顔を近づけてきて……
わたしもそっと唇をつきだして、ゆっくりと瞳を閉じた。
遅刻しちゃったけど、ちょっと、良かったかな……
柔らかい感触の残る唇を押さえながら、わたしはちょっとだけそう思った。
本当に、ちょっとだけですよ。
「で、二時間の遅刻ってのも随分豪快ね、あんたも」
「し、仕方なかったんですっ」
横の席でからから笑いながらいうかなめさんに口を尖らせて言う。
「あのねー、寝坊して遅刻が仕方なかったらどんな遅刻だって正当化できちゃうわよ」
「で、でも、昨日夜遅くまで起きてましたし……」
それに、どきどきしてなかなか眠れなかったですし……
だから、しょうがなかったんですっ。
「ま、いいけどね……。ソースケに変なことしてないでしょうね」
「し、しませんそんなことっ」
顔が熱くなるのを感じながら答える。そりゃあ、ちょっとは、して欲しいかなー、なんて思いましたけど、あ、う……
で、でもソースケさん全然してくれませんし……やっぱりもうちょっと積極的に行かなきゃだめなんでしょうか……。でも、もっと積極
的って言ったら、あ、あんな事とかしか、あ、うー……
「おーい? テッサー? 何顔真っ赤にして身もだえしてんのー?」
かなめさんがわたしの前で手をひらひらさせてみる。
「……はっ!? ご、ごめんなさい、ちょっと考え事を……」
「……? あ、そう……。なんか、見かけがすーっごく怪しい人みたいに見えたんだけど……だいじょぶ? 頭とか」
「だ、誰が怪しい人ですっ!?」
思わずがたっ! と席をたち叫んでしまう。そ、ソースケさんだけじゃなくかなめさんまで言うなんてっ!
「ちょ、ちょっと、テッサ。今授業中……」
「へ? あ……」
気付くとクラスの人みんなが驚いたようにわたしの事を見てる。ソースケさんまでめずらしくめをぱちぱちさせている。そして、教壇に立っている古典Bの先生がこめかみの辺りをひくひくさせながら、
「誰が、怪しい人なんですかな、テスタロッサさん……?」
「え、ええと、だ、誰でしょうか……あはは……」
「そうですなあ、いくら転入生だからって、遅刻までして少しばかり気が緩んでるんじゃないんですか……?」
「あ、あははは……、そ、そうですねえ……」
乾いた笑い声を上げながらなんとか相槌を打つけど……
そんな冗談が通じるほど世の中甘くはなかったみたいです。
おかげで3時間目中ずっとバケツ持って廊下に立たされて……ううっ、手が痛いです……
なんでこうなっちゃうんでしょう……? はあ……
続く
あとがきだとか主張してみたい物体。ていうか愚痴(笑)
どうも~みなさん東方不敗です。桜も咲き春が近づいてきてますね~。で、そーてっさシリーズ第二弾お送りします。
今回はなんとなーく日常をつらつらと書いていきたいと思います。まーなにかと事件があると思いますけど。それと四月前期とかは書くペースがしばらく落ちると思います。ちょいオリジナル小説なんか書いてみちゃったりしてるんで。あははのは。ごめんなさい許してください(^^ゞ
それではー、東方不敗でしたー。
P.S このごろどうぢんの世界に興味を示してたり(笑)