Please Kiss Me♪ 第3話 by 東方不敗
「て、手がちぎれそうです……」
「いやさすがに千切れる事はないでしょ」
「でも……すっごく重いんですよバケツって」
「はいはい。……で、テッサ。あんた昼ご飯どうすんの?」
「あ……えっと。そーですね……」
「ん?」
「それじゃ、学食に行ってみたいです」
「まさか学食がないだなんて思いませんでした……」
「しょうがないでしょ。ないもんはないんだから」
「うう……楽しみにしてたのに」
結局『ハナマルパン』というお店でパンを買って、天気も良いので屋上で食べる事にしました。メンバーは、わたしとかなめさんと、常盤さんと、それに……
「あのー、ソースケさん?」
「なんでしょう」
「その、えーと。なんでレーションなんか食べてるんです?」
「……何か問題が?」
「いや、ありませんけど。おいしくないじゃないですか」
ぐちゃぐちゃしてるし、ビニールくさいし……。
わたし始めて食べたとき吐き出しましたもん。
「そうでしょうか」
「そーですよ。もうちょっと美味しいの食べれば良いのに」
ぱくっとカスタードパンを口に運ぶ。甘さが程よくて……おいしいです~。
「おいしいです」
「でしょー? あたしのオススメ」
『あーん』て口を開けてメロンパンをかなめさんがかじる。
「ねえねえテスタロッサさん」
「はい?」
「テスタロッサさんって、そういえば相良くんにお弁当作ってあげたりとかしないの?」
ぶふぁっ!
思わず食べかけのカスタードパンを噴き出してしまった。
「きょ、キョーコっ!」
「? なんでカナちゃんが怒るの? 別に関係ないじゃん」
「そ、それは……。その、だって、あ、ぅ……」
そんなやりとりが聞こえる中、わたしは顔をうつむかせて考えこんでいた。
お弁当……
ソースケさんと、二人っきりで……
「……いいかも」
「は?」
「あ、いえ、なんでもないんです。あの、ソースケさん?」
「な、なんでしょう」
できるだけ冷静にソースケさんに話しかける。
「あの、お弁当、作ったほうが良いでしょうか……?」
「い、いえ。自分は、その、作っていただければ光栄かと……」
しどろもどろになるソースケさん。なんだかこんなソースケさん見てるのも面白くはあるんですけど……
「……わかりました。じゃあ、お弁当作ります」
顔が熱くなるのを感じながらつぶやく。
「りょ、了解しました」
「はい。だけど、ちゃんと食べてくださいね。せっかく作るんだから♪」
「はっ」
ぴしっと背筋を立てて敬礼するソースケさん。ふふっ、変なソースケさん。
「あ、そーだ、ねえキョーコ」
「ふえ?」
ぽんっと手を打つとこしょこしょと常盤さんに耳打ちする。……なに?
「えー? でも、お邪魔じゃないの?」
「大丈夫よ。大体ホントは邪魔しに……けほけほっ、それに、キョーコだって見てみたいでしょ?」
「そりゃあそうだけどさ」
「あのー? さっきから何の話です?」
何が邪魔なんでしょう?
「あのね、テスタロッサさん。カナちゃんが家――」
「あぶなぁぁぁぁぁぁぁいっ!」
すぱんっ!
何故かハリセンで殴られたのは常盤さんだった。
「……え?」
「ああっ、キョ、キョーコだいじょぶっ!? ああ、まさかこんなところで『突発性ミル・マスカラス症候群』が発症するなんてっ!?」
「は、はい?」
「うう……か、カナちゃん……」
「キョーコっ!? だいじょぶキョーコっ! 傷は浅いわよっ! 脳震盪(のうしんとう)にはなってるかもしれないけどっ!」
ハリセンで脳震盪ってそれどーいう……て、そんなことはどうでもいいんです。何故か息も絶え絶えな常盤さんがかなめさんの手を握ってます。
「み、ミル・マスカラスは……フライング、チョップ……」
ばきっ。
肘打ちが炸裂して常盤さんは気絶してしまいました……。なんだったんでしょう?
「あのー、かなめさん、大丈夫なんですか常盤さん?」
「ああ、だいじょぶよだいじょぶ」
「そうですか。で、なんか言いたい事でもあったんですか? 常盤さん何か言いかけましてたけど……」
「あー、えっとね、気にしないで。うん、テッサは関係ないからね」
「……そうとは思いませんでしたけど……ねえ?」
ソースケさんと顔を見合わせる。
「いいからっ、気にしないのっ! 気にしない方がいいこともあるのよっ! うははははっ……」
「はあ……」
そこで、昼休みの終りのチャイムが鳴り響いた。
なんか騒がしいお昼休みでしたね。
家に帰ると着替えてからリビングでしばらくソースケさんと談笑する。
それと、さすがに寝てる場所は別々ですよ。
その、部屋は一緒ですけど……。で、でも、まだそーいうことはやってないんですよっ。
本当ですよっ。
「やっぱり、色々戸惑う事も多いですけど、面白いです。新しい環境ってのは」
「そうですか」
「ソースケさんもこんな感じだったんですか?」
「自分は……戸惑う事ばかりでした」
「そうですよね、まあ、あの報告書を見れば大体見当はつきましたけど……」
「報告書?」
「メリッサに貰った物です。えっと、確か『火気を没収』されて『多数の民間人に殴打』されて『極めて不自由な状態でセーフハウスに帰還』したんでしたっけ?」
「……むう」
「ソースケさん、脂汗が出てますよ」
「しかし、最低限の危険を考えての処置を……」
「それで自爆しまくったんですよね。確か。メリッサもクルツさんもそんなこと言ってましたよ」
「そ、それは……」
「ふふっ……」
ふと、会話が途切れる。しばらくぼおっとソースケさんの顔を眺めてから、そっと近づく。
「ソースケさん……」
そのままそっと唇を重ねる。
「ん……」
しばらく、時間が止まったみたいに唇を重ねあう。
そこで、
ぴんぽ~ん。
「っ!?」
ほとんど反射的にばっ! と体を放す。ううっ、な、なんか心臓がどくどく言ってます……
ふと見ると、ソースケさんも同じような行動をとったみたいで、ソファーに張りつくみたいにして私の事を見てる。
……気まずい沈黙。
「え、えっと、お、お客さんみたいですね。あははは」
「そ、そのようですね」
「わ、わたしが行きますね」
顔が熱くなるのがわかりながら取り繕うみたいに笑いながら玄関に向かう。
もうっ、せっかく良い雰囲気だったのに……一体誰ですか……
もし宅配便だったら二、三発殴っちゃおうかと考えながら、扉を開ける。
「はい? 一体誰……」
「やっほ~テッサ~♪」
…………
「…………え?」
そこにいたのは、にこにこ笑ってるかなめさんとその後ろでため息をついてる常盤さんだった。
続く
後書きっていう物体
どうもみなさん東方不敗です。『Please Kiss Me』のその三をお送りします~。
さてさて、かなめは一体何を考えてるんでしょうね~。まぁ大体想像はつくと思いますけど。秘密です~。それは次回のお楽しみ♪
それでは~。またお会いしましょう~。