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2014.02.20 10:27

Please Kiss Me♪ 第6話 by 東方不敗

「か、かなめさん、そんな怒んないでくださいよ」

「いいえ別に怒ってなんかないわよえーもう怒ってなんかないんだから」

うう、絶対怒ってます……

さっきからずっとこんな調子です。そりゃあまあ、なんていうか、あんなところで、その……ソースケさんと、キスしちゃったのは、悪いと思いますけど、でも、わたしとソースケさんは恋人同士なんだから、別に、その……

と、とにかく、そんな怒るような事じゃないはずなんですっ。

ちなみに今わたしとかなめさんがいるのは寝室の中。わたしは自分のベッドに腰掛けて、かなめさんはソースケさんのベッドに腰掛けてる。で、ソースケさんは今お風呂。

「とにかく、そんな怒んないでくださいよかなめさん、その、わたしとソースケさんはそーいう関係なんですから、別にそんなことしても変じゃないんですから」

「でも人の目の前であっつ~いキッスをするのはどうかと思うんですけど」

う、そ、それは……

「え、えとですね、アレは、その、その場のノリって言うかなんていうか」

で、でもまあ、確かにあれはやりすぎちゃったとおもうですけど……

「ふ~ん……その場のノリねえ……」

じと~っとした目でかなめさんがわたしを見つめてくる。うう、怖いです……

で、でも、ここで主導権を取られちゃったらヤバイですよね……。ここで調子に乗られたら、ホントにかなめさん何するかわかったもんじゃないですし……だ、大体、あんなことまで考えてるんですよ!?

「そ、そーです、その場のノリです」

「じゃああたしもその場のノリでソースケ押し倒しちゃっても文句はないわよねえ?」

へ……そ、その場のノリって……

「じょ、冗談じゃないですっ! そんなこと絶対ダメですっ!」

そ、そんなことされたら押しの弱いソースケさんの事ですからきっと場の雰囲気に流されて……

…………

ぜ、絶対させませんよそんなことっ!

「か、かなめさんっ、絶対そんなことしちゃだめですからねっ!」

「でも、別にライバルに遠慮する必要はないんじゃないの?」

うっ……た、確かに理屈は通ってますけど……

「で、でもフェアじゃないですっ!」

「フェアってどーいうことよ?」

うっ……そ、それは、だから……

「だ、だから、そーいうことは……互いの気持ちと気持ちがあってこそ初めて成り立つんですから……だから、その……ごにょごにょ……」

「テッサー。顔真っ赤よー」

「だ、誰のせいですかっ!?」

そんなこと言わせようとしたのはかなめさんですよっ!

「あはは。相変わらずねー、テッサは。二ヶ月ぐらい会ってなかったけどさ、全然変わってないわ」

「な、なにがですか……?」

「そんな冗談真に受けちゃうところ」

…………へ?

「じょ、冗談だったんですか今の?」

「うん、半分ぐらいね」

へー……そーなんですかー……って。

「半分はってもう半分は本気ってことじゃないですかっ!」

「あ、気付いた」

「気付きますよふつーはっ! と、とにかくそんなこと絶対しちゃダメですからねっ!」

「別にライバルに気使う必要はないけどね」

「……っ!」

じゃ、じゃあ……わたしがどうにかして阻止してあげますっ!

絶対にそんなことさせないんですから。

その、ど、どんなことをしても、止めてみせるんですからっ!

で、でも……

…………

ぼんっ!

あ~ん、や、やっぱりできませんよあんなこと……どうしたらいいんですかぁ……

そんなこんなでソースケさんがお風呂から出てくる。

「空きましたよ、テッサ、千鳥」

「は、はいっ」

「あ、ありがと、ソースケ」

「ああ。……それで、どちらが先に入るんだ?」

「あ、えっと……。どーしよっか、テッサは?」

「あ、か、かなめさんが先に入ってください。わたしは、後でいいですから」

「? そう、じゃ、先に入らせてもらうわね~」

かなめさんが笑顔でうなずくと部屋を出ていく。入れ替わるようにソースケさんが自分のベッド――ていうかわたしの目の前――に腰掛ける。

いつものざんばら髪が微妙に濡れている。それに、黒のシャツの間から微妙にソースケさんの体が見えて……

どきどきどきどき。

だ、ダメです……なんか意識しちゃう……

「それにしても、一人多いだけでこうもにぎやかになるんですね」

「あ、そ、そうですねっ」

完全にいつもと違う調子で返事をしてしまう。

「……テッサ?」

う、な、なんだか不思議そうな顔してこっち見てる……そりゃそうですよね、絶対今顔真っ赤になってるでしょうし……

で、でも、これだけは言っておかなきゃ……。別に、信用してないってわけじゃないですけど……やっぱり、ソースケさんは、あーいう押しに多分弱いですし……

「そ、ソースケさんっ」

「な、なんでしょう」

「あの……えっと……」

もごもごと口を動かす。ううっ、は、恥ずかしいです……

「その、か、かなめさんが……」

「……千鳥、ですか?」

「は、はい。……かなめさんが、へ、変なことしてきても、その……えっと、な、流されないでくださいね」

「…………は?」

こっちの意志が伝わらなかったらしく、怪訝そうな声が返ってくる。

「だ、だから……。そ、ソースケさん、ちょっとこっち来てください」

「は?……別に、盗聴はされてないと思うのですが……」

「いいからっ、こ、こっち来てくださいっ!」

ぐいっとソースケさんの腕を引っ張って、すぐ近くまで寄ってこさせる。

「だから……その、一回しか言わないから、良く聞いてくださいね。……こういうことです」

ごにょごにょと耳打ちする。

…………

「……わ、わかりましたか?」

「……了解しました。が……」

ソースケさんがちょっと不機嫌そうにわたしのことを見てくる。そして、

「……テッサ。自分は、そんなに信頼できないでしょうか?」

……え?

「確かに、俺はあなたと違ってあまりしっかりしているとは言えません。言えませんが、それほど信頼できないんでしょうか……?」

「ち、ちが……」

「テッサ。俺は、君にとって、そんなに信頼できない存在なのか?」

「ち、ちがう、違うんですっ!」

思わず自分も驚くぐらい大きな声で叫んでしまった。

でも、これだけは、誤解されたくなかった。

信頼してないだなんて、思って欲しくなかった。

「しかし、テッサ。俺は……」

「……ソースケさんっ」

ふっと腰を浮かして。

ソースケさんの唇を、わたしの唇で塞ぐ。

「っ!……ん、んうっ!? ん……」

そのままベッドの上にどさっと倒れこむ。そのショックで唇と唇が離れる。

「テッサ、何を……っ」

ぎゅっ。

「てっ……さ……?」

怪訝そうなソースケさんの声が頭越しに聞こえる。

そんな声を聞きながら、わたしは肩を震わせていた。

「ごめんなさい、違う、違うんです……」

「テッサ……」

「怖かったんです……。ソースケさんが、大切な人がいなくなっちゃうかと思うと、怖くて、それで。考えがどんどんいやな方行っちゃって……」

「……テッサ……その、自分は……」

「……ごめんなさい、わたし、嫌な女ですよね……」

素直じゃなくて。

いつも大切な人をひどい目にばっかり合わせて。

大切なときに、なにもできなくて。

迷惑ばっかりかけて。

大切な人も信用できなくて、立場が悪くなったらこんなお願いなんかして……

……でも。

「でも、わたし、あなたの事、大好きなんです……」

「…………」

ぎゅっ。

手に無意識に力が入ってくる。涙声のまま、必死に言う。

「大好きなんです。だから、嫌いに、ならないでください……」

「……テッサ」

ぎゅっ。

「ぁ……」

背中に柔らかい感触。顔を上げると、ソースケさんが優しくほほ笑んでくれている。

「……大丈夫です。俺は、あなたの事を嫌いになったりはしない。だから……だから、俺の事を信じてくれ。……君に比べたら、確かに俺は弱いが、だが、君のことを裏切ったりは絶対にしない。絶対に……」

「……ソースケさん……」

じわっと、また視界が潤んできた。ぽたぽたと涙が流れていく。

「ひっ……うっ……そーすけ、さぁん……っ!」

「…………」

ぎゅっと、暖かい感触がわたしを抱きしめてくれる。

そんな感触が、嬉しくて、とっても愛しくて……

わたしは、子供みたいに、ちょっとの間だけ泣いた。

 

 

続く


後書きっていう物体

どもども、東方不敗です。ここに第6話お送りします~(ぱちぱち)。
にしても、随分シリアスチックになりました、ラストが。でもまあ、テッサならきっとこんな行動を取るんじゃないかと思います。恋する乙女って言うのは不安になるもんですしね。多分ですけど(笑)。
それでは、今度は第七話でお会いしましょう、東方不敗でした~。

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