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2014.02.20 10:27

Please Kiss Me♪ 第7話 by 東方不敗

わたしが泣き止んでちょっと経ったころにかなめさんがお風呂から出てきた。

「テッサー、お風呂出たわよー」

「はい。じゃ、わたしも入っちゃいますね」

立ち上がって、ちらっとソースケさんに目配せすると、こくっ、とうなずいてくれた。ふふっ……

「? どーかしたの?」

「いいえ、なんでもないですよ」

ぱたぱたとにやけてしまってる顔を隠しながら手を振る。かなめさんには悪いですけど、きっと安心ですね、これなら。

それに、さっき言ったばっかりですし、信じてあげなきゃいけませんよね♪

「……テッサ、あんたソースケになんかしたの?」

「や、やですねえ、なんにもしてませんよ」

じと~っとした目で見てくるかなめさんを横目にわたしは部屋を出ていく。気をつけなくっちゃ。さっきの事気付かれたらかなめさん何言い出すかわかったもんじゃないですしね。

まだ暖かい空気が残っているお風呂場に入るときゅっとシャワーの栓をひねる。ちょっと熱いぐらいのお湯が頭にかかる。

……一応、念入りに洗った方がいいですよね、体。

ボディソープでごしごし体を洗いながら考える。ほら、やっぱり、なんかあるとしたら、きれいなほうが良いですし……

べ、別に期待してるわけじゃないんですよ。それに、かなめさんもいるんだから。

でも、万一っていうこともあるし……

……ほ、ホントに期待とかしてるわけじゃないんですよっ。

結局、いつもよりかなり念入りに体を洗うことにした。

脱衣場の鏡の前でくるっと一回転してみるけど、ちゃんときれいな体が映ってる。

……よしっ。

後は髪乾かして梳けば完璧ですね。これでいつそういうことになっても……

……だから、期待してるわけじゃないですからねっ。

「……でさ、ソースケの奴ったらそこで、こんな風に言ってきたの。『できない、君には知る権利が無い』って」

「はぁ、そんな風に……」

わたしはドライヤーで髪を乾かしながらかなめさんに相槌を打った。

「……あの時はあれが最善な言い方だと思ったのだ」

「んなわけないでしょ。で、その後みんなで部室から放り出してやって。あんときはホント笑えたわねー」

「で、そのままセーフハウスに帰ったんですか?」

「……肯定です」

心なしかどこかしょんぼりしたような調子でソースケさんが返事をする。はぁ……

「なんだか、驚く以前に呆れちゃいますね。ソースケさんの昔話って」

ほんとーに常識ないんですねぇ……。もうちょっとはあると思ってたんですけど……

「今は少しはついたけどねー。でも相変わらず一週間に一回は靴箱はふっとばすしガラスは突き破るし、一生かかっても完全に元に戻すのは無理なんじゃないの?」

「わたしもそう思います」

「むう……」

むっつり顔でソースケさんがうなる。あ、脂汗流してます。

「それにしても……ちょっと喉かわきましたね」

ドライヤーをぱちっと止めて言う。お風呂出てからずっとしゃべりっぱなしだったから、さすがに喉が乾いてくる。

「あ、じゃあたしが水入れてこよっか」

「え? でも……」

「いーからいーから。やらせてよ」

止める暇もない。ぱたぱたと部屋を出ていってしまう。

「行っちゃった……」

「別に問題はないでしょう」

「まあ、そうなんですけど……」

ま、いいです。せっかくだから甘えちゃいましょう。

「それで、ソースケさん」

「? なんでしょう?」

「他に昔、どんなことやったんですか?」

「……あまり話したくないのですが」

「いいじゃないですか。恋人の頼みの一つや二つ、聞いてください♪」

ちょっと顔が熱くなるのを感じながら言ってあげる。やっぱりこういって面と向かって言うとてれます……

「……わかりました。しかし、聞いてて退屈だと思いますが」

「ソースケさんの話なら、全部面白いから大丈夫です♪」

「……わかりました。では……」

それからちょっとの間、なんとなく幸せな気分にひたりながらソースケさんの話に耳を傾けた。

「テッサー、水持ってきたわよー」

「あ、ありがとうございます」

「いやいや、いいのよ、これくらい」

三つグラスの乗ってるお盆を置きながら笑うかなめさん。ふふっ、照れてるんですかね。

「でも、ありがとうございます。ホントに喉乾いてたから……」

グラスを一つ手にとって口につけようとして……

……ん?

この匂いって……

「? どしたのー、テッサ?」

にこにこ顔のかなめさんが聞いてくる。

……もしかして。

「きゃっ! 壁にゴキブリっ!」

「えっ!?」

わたしが指差した先を見るかなめさん。

さっ。

「む……」

「? んなのいないじゃないの」

「ごめんなさい、見間違いだったみたいですね」

「もー、びっくりさせないでよ」

「あはは、ごめんなさい」

「……テッサ、今なぜ――」

「はいはい、なんですかソースケさん?」

くるっとソースケさんの方を向きながら視線でプレッシャーを与える。言ったら、どうなるかわかってますね……?

「い、いえ、なんでもありません」

「……ソースケ、あんた脂汗出てるわよ」

「いや、そんなことはない」

「どっからどー見てもだらだら流してるように見えるんだけど」

「きっと、暑いからですよ。ほら、せっかくかなめさんが持ってきてくれたんですから、ソースケさんも飲みましょうよ」

空いてる片手でソースケさんにもグラスを渡す。

「あ、じゃ、三人でカンパイする? ソースケとテッサの同棲記念とかそんなので」

「あ、いいですね。それじゃ、かなめさんも」

「うん。……それじゃ、かんぱーい」

かちんっ。

ごくっ、ごくっ、ごくっ。

ぱたん。すぴー、すぴー、すぴー。

「……やっぱり」

そのまま地面に突っ伏して寝はじめたかなめさんを見下ろしながらつぶやく。やっぱり、睡眠薬とか入れてたんですね……

「テッサ」

「? はい、なんです?」

「その……何故、わかったのです?」

「? 何がですか?」

「その……千鳥が、睡眠薬をいれてたことです」

「あ……それではですね」

ぴっと指を立てて、にっこり笑いながら言ってあげる。

「女の勘って奴ですよ♪」

そう言ったら飽きれたような顔をソースケさんがしてきた。別にそんな顔しないでもいいじゃないですか。

「……それで」

ちらっ。

「彼女はどうしましょう」

「あ、そうですね……かなめさんの家に戻しておきましょうか」

「今からですか?」

「別に問題はないでしょう?」

にっこり笑って言ってあげる。それに、これ以上家に置いといたらホントに貞操が危なそうですしね……ソースケさんの。

「それでは、早い方がいいでしょう」

「あ、そうですね。……ソースケさん、かなめさん背負ってもらいます?」

「了解です」

ソースケさんがかなめさんを、わたしがかなめさんの荷物を持って家を出る。二人で並んで月明かりに照らされた夜道を歩きはじめる。

「それにしても、何故千鳥は睡眠薬などいれたのでしょう」

「……言わなきゃ、わかんないんですか?」

「? どういうことですか?」

「……ソースケさん、にぶちんです」

「は?」

「ま、昔からわかっていたことなんですけどね」

くすっと笑いながら言う。なんとなく、ソースケさんっぽくって嬉しい。

「ソースケさん」

「なんでしょう」

「浮気、しないでくださいね」

「もちろんです」

妙に自身満々に帰ってくる。ちょっと疑わしくなるくらい。

「ほんとーですかぁ?」

「肯定です」

「じゃ、浮気したら許しませんからね」

「了解しました」

「……ソースケさん。ちょっと、止まってください」

「? なんでしょう」

「……浮気しないように、おまじないです」

ちょっとだけ顔が熱くなるのを感じながら、ついっとつま先を上げてソースケさんの唇にキスしてあげる。

「ん……」

ちょっとだけの空白。

ソースケさん……

「あー、うっほんっ」

「ひゃっ!?」

思わずすくみあがって振りかえると、

「……く、クルツさん?」

何故か今アメリカにいるはずのクルツさんが立っていた。

「あー、もしかしてお邪魔だったかな? お二人さん。にしても、あっついねえ。ひゅーひゅーだよ」

「うっ……。そ、そんなことより、ここで何してるんです?」

「いや、ちょっと懐かしい顔に会いたくなって。先にかなめちゃんの家に行ったんだけどひっでえ目にあってね、今さっきまで気絶してたんだよ」

「……もしかして、その顔が面白いくらいぼこぼこになっているのもそれが理由か?」

「一体なにしたんです?」

「いやー、別に。ただソースケに振られたって言ったからさ、『じゃーこのお兄さんがあっためてあげよう』て言っただけで」

『それはお前(クルツさん)が悪いだろう(でしょう)』

「うわ、即答」

「……それにしても、大体お前はマオと結婚したんじゃなかったのか?」

「そうですよ。結婚式もやってたのに……」

「あー、それなんだけどな。ちょっと今喧嘩してて今も命からがらアメリカから逃げてきたばっかでな。はははのは」

「喧嘩って……一体何……。あ」

がしっ。

「ぐえっ!? な、なにしやが……って、ね、ねーさんっ!?」

「んっふっふ……あたしから逃げようったって百年早いのよ、え、クルツぅ……?」

「て、テッサぁ、ソースケ、助け……って、何遠ざかってんだよおいっ!?」

「いや、だって……」

「お前ら夫婦の問題だろう。それに俺達にはやることがある」

「そ、そうですよ、それじゃ。生きてたらまた会いましょうね」

「いやーっ! 見捨てるなーっ!」

クルツさんの悲痛な叫び声を背中に受けながらすたこらとその場を離れてく。

「ね、姉さん俺が悪かったからっ! もー浮気なんかしないから命ばかりはあっ!」

「謝ってすんだら警察はいらないってねーっ!」

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「……ソースケさん、浮気、しないでくださいね」

「もちろんです」

即答するソースケさん。にしても……

クルツさん、生きてるんでしょうか……?

はぁ、メリッサ、怒ると怖いですからねえ…

続く


後書きっていう物体

クルツくん、浮気はいけませんよ(笑)。
とゆーわけで、ちょっとエキストラでクルツとマオを出してみました。まー、なんていうか、クルツは出てきてやられただけですけど(笑)。
さて、家に帰った二人はどうするんでしょうか? それとも……(にやり)
ふふふっ、それでは次回をお楽しみにー(笑)。

……テッサ、大胆……(ぼそっ)。

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