救ってあげたいロンリーネイバー 第1話 by モチケン
<プロローグ>
午前5:54 某国某所
一人の男が港の公園のベンチに座り、ジェラードを食べている。
朝靄がかかるこの港は出港する漁船で賑わっていた。
そんな様子を目に入れながらも黙々とジェラードを食べつづける男。
その男の後ろから朝靄に隠れつつ一人の男が現れた。
金髪のその男はジェラードを食べている男の左隣に腰を下ろした。
「…食べるか?」
ジェラードを食べていた黒髪の男が金髪の男にジェラードを差し出した。
「…いや、結構だ」
金髪の男はコートのポケットから右手を出し、左右に振る。
「…そうか」
金髪の男の動作を見ると、黒髪の男はジェラードを片付けに入った。
全て食べ終わると、律儀にベンチを立ち、朝靄で隠れてあまり見えないくずかごに向かって歩いていった。
それとは対照的に金髪の男は黒いコートの内ポケットから、チョコレートを取り出し齧り始めた。
「お前、本当にチョコレート好きなのな」
ゴミを捨てに行った黒髪の男がベンチに座り直しながら言う。
「…こればかりは仕方がないんだ。遺伝でね」
金髪の男はそう言うと、内ポケットから別の板チョコを取り出し、
「…食べるか?」
と、黒髪の男に差し出した。
「いや、結構だ…」
黒髪の男はジージャンのポケットから左手を出し、左右に振る。
「…そうか」
黒髪の男の動作を見ると、金髪の男は板チョコをポケットにしまい、さっきまで食べていた自分のチョコレートを片付けに入った。
「…で、お前が直々に俺のところに来るなんてよほどのことなのだろう?」
海を見つめながら、黒髪の男が金髪の男に尋ねる。
「…あぁ、まあな」
チョコレートを食べ終わった金髪の男は胸ポケットからハンカチを取り出し口の周りを拭う。
「ウィスパードが見つかったのか?」
金髪の男がハンカチを海に投げる瞬間、黒髪の男が口を開く。
「…そんなところだ」
金髪の男が海を眺めながら言う。
「…確かなんだろうな。今まで、そう言ってもう四回もスカを食わされてるんだぞ」
「わかっている。だが、アレの情報は極端に少ないんだ。実家の力をフルに使ってもこの有様だしな」
「まぁ、1ヶ月に四回も違う情報が飛び交って、行ってみたらウィスパードなんてどこにもいやしない。あったのは、テロ屋の本拠地だけ…」
黒髪の男がベンチから立ち上がる。
「別に、テロリストを潰すのが嫌なわけじゃないんだけどな。あいつらは最低のクズどもだから……。だが、お目当てのモノが手に入らないのはどうしても歯がゆい…」
「だが、それが資金源になるのは事実だ。ゲイボルグには予備パーツが少ないんだ。それの整備となるととてつもない金が動く……。作ったお前ならわかるだろう?」
金髪の男が黒髪の男に目を向けながら言う。
「……わかってるよ。お前には色々と苦労をかけてるからな。テロ退治くらいお安いご用だ」
黒髪の男が尻ポケットから潰れたタバコの箱を取り出し、ジーパンのポケットからジッポライターを取り出し火をつける。
「だが、今回の情報は結構なものだと俺は睨んでいるんだ。だから、わざわざ時間を割いてお前に直々に会いに来た」
金髪の男がポケットから手を出しタバコの煙を扇いでいる。どうやら、タバコは苦手らしい。
「聞こうか…」
タバコの煙で肺を満たし、ゆっくりと吐き出すとタバコを足で踏み消し黒髪の男は歩き始めた。
その横に金髪の男が並ぶ。
「『ミスリル』って単語に聞き覚えはあるか?」
金髪の男が黒髪の男に問う。
「あぁ。最近幅利かせてる、対テロ組織だろ?」
「そうだ。その中心部隊が最新型のASである『M9』を筆頭に強襲揚陸艦を使ってテロを鎮圧しているらしいんだ」
「確か、『トイボックス』だったか?米軍の潜水艦『パサデナ』が接触したとかいうのを聞いたが…」
二人は人気のない街路を歩きながら言葉を交わしていく。
「その、『トイボックス』だが、どう考えてもブラックテクノロジーが使われているのは間違いないみたいだ。と、いうことは『ミスリル』もウィスパードを保有しているということになる」
「まぁ…確かに」
「そして、もう一つの情報だ。その強襲揚陸艦の艦長がウィスパードらしい」
「………確証はあるんだろうな?」
黒髪の男が金髪の男を疑わしげな目で見る。
「んなものはない」
「おい!?」
金髪の男の言葉に黒髪の男がすかさず突っ込みを入れる。
「だが、もし『トイボックス』を発見できればすごいことになるぞ。今まで散々謎に包まれた『ミスリル』が明るみに出るわけだからな」
金髪の男が意気揚揚と話す。
「単にお前ら一家が『ミスリル』の技術を欲しいだけなんじゃないのか?」
先ほどと同じ疑いの眼差しで金髪を見る黒髪。
「何を言ってるんだ!少なくとも『ミスリル』にはウィスパードは必ずいるはずだ。その潜水艦をトレースすれば本拠地だってわかる。お前のマナナーン・マクリールなら追跡は可能だし、お前の腕なら基地への潜入も可能だろう?」
「なるほど、そういうことね」
黒髪の男が苦笑する。
「…引き受けてくれるか?」
金髪の男の言葉に黒髪の男は無言で頷いた。
「初めから受けるつもりだったさ。最近、退屈してたところだしな」
「そうか。よろしく頼むぞ」
黒髪の男の言葉に胸を撫で下ろす金髪の男。
「それよりも、あいつのガードはしっかりと固めておいてくれ。もし、俺の情報がバレた時には必ずあいつが狙われるはずだ」
黒髪の男がいつになく真剣な声で言う。
「…わかってるよ。その辺に抜かりはない。そろそろ、会いに行ってやったらどうだ?」
金髪の男が黒髪の男を促す。
「……このことが片付いたら行くよ」
「……わかった。では、幸運を祈る」
金髪の男はそう告げると、黒髪の男と別れ別の街路地へと入って行く。
それを見送ると、黒髪の男はまた港へと足を向ける。
その胸元には銀のロケットが揺れていた。
彼にとってこの世で一番大切なものの写真がおさめてあるもの。
彼は無意識のうちにそれを片手で握り締めた。
「…キャナル、何処まで来ている?」
『YES、マスター。すぐそこまできています』
彼の問いに女性の声で答える声が聞こえる。
「合流するのにもっとも最良なポイントは?」
『現在地から300m歩いたところに、灯台が建つ岬があります。そこで合流しましょう』
「了解」
簡単なやり取りの後、男は岬に向かって歩いていく。
しばらくすると、岬の先にたどり着く。
そして、特有のオゾン臭と静かなエンジン音。
『おまたせしました、マスター』
「次の仕事が決まった。さっそく行くぞ」
そして、彼の姿が風景に溶け込んだように見えた。
いや、性格には歪みの中に消えた。
彼は、操縦席に滑り込み各部のチェックを済ます。
「気分はどうだ?」
『はい、問題ありません。私もゲイボルグも』
操縦席の中から先ほどから聞こえていた女性の声が聞こえてくる。
「このままマナナーン・マクリールへ帰る。仕事の説明はそれからだ」
『了解、マスター。ゲイボルグはこのままマナナーン・マクリールへと向かいます』
彼の言葉にコクピット内部の計器類が動き出す。
「ゲイボルグ発進」
『ゲイボルグ、航空機形態巡航モード発進します』
キャナルの復唱と共に岬から歪みが消える。
姿の見えない翼が遥かな海へと羽ばたいていった。
そして、この時運命の女神が彼へとちょっかいをかけていることには誰も気付かないまま。
続く
あとがき
どうも!モチケンこともっつぃ~です。
入院して1週間後の現在、足が動かなくてめちゃめちゃむかついております(笑)。
とりあえず、なんとか第1話……プロローグだなこれ(汗)。
しかも、量がめちゃくちゃ少ないし(滝汗)。
そして、なんのことやらさっぱりですな、話だけ読んだら(苦笑)。
っていうか、フルメタキャラは出てないわ、登場人物の名前は明かされてないわ、キャナルは登場してるわ(エ)。色々なことが起こっていますね~(笑)
しかも、まだ退院できないし(涙)
一応、第2話では頭からテッサで始まる予定です。
本当はプロローグの最後に「さぁ、ビジネスの始まりだ!」と入れたかったのですが、さすがにヤヴァイと思って止めました(苦笑)。
なんとか、がんばってもっと書くつもりなのでみなさん見捨てないで下さいね~。
では~♪