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2014.02.20 10:32

あたし達の日常 by SERA

RRRRRRRRRR……RRRRRRRRRR……

『はい、相良です』
「あ…!…そ、ソースケ…。ゴメン、寝てた?」
『千鳥か?
 いや、問題ない。
 こちらも課題に取り組んでいたところだ。それよりどうしたんだ、こんな時間に?』
「ん…パーティの後とかって…何となく苦手でさ。誰かの声が聞きたいって、思ったのよ」
『そうか…。
 そういえば俺も、最近就寝後にひどく孤独感に苛まれることがある』
「へぇ。あんたも、そんな風に感じることがあるんだ?」
『君の、せいだ』
「…あたし…の?」
『ああ。以前の俺ならばそんな気持ちにはならなかっただろう。
 しかし、その…』
「その、なによ?」
『1年前に君と出会ったときから…俺は、一人というものがいかに寂しいものかを理解してしまった。
 兵士としては、失格かもしれんが、な』
「あ…」

ソースケの部屋を思い出す。
いくつかの写真が飾られただけの、飾り気が少ない部屋。
人が生活するには、ちょっと寂しすぎる部屋。
思い出していたら、なんだか胸のあたりが苦しくなった。
あたしはその感情を感じて苦笑を浮かべ、ソースケに言った。

「…ね、今から家に来ない?」
『こんな時間では君に迷惑がかかると…』
「…責任、取ってあげるわ。
 あんたを、寂しくさせてる原因として、ね」
『む、しかし』
「いいんだってば。
 どーせ明日は土曜日だし。ついでだから宿題も持ってきなさいよ。一緒にやろ?
 …それに正直一人じゃ広すぎるのよ、この家。
 間が持たないって言うか…」
『わかった。これからそちらへ向かう』
「ん、待ってるから」

そっと電話を置き。
あたしは、自分の行動に今更ながら驚いていた。

去年は修学旅行のやり直しで出来なかったあたしの誕生日パーティをやろうと言ったのは…たしかキョーコだったかな。
去年卒業した先輩や、何故かクルツくんやマオさんまで巻き込んでの大騒ぎは、終始盛り上がっていた。盛り上がっていただけに――。
みんなが居なくなったときの孤独感に耐えきれなくて。
つい、ソースケに電話してしまったのだ。

「どうしたんだ、一体?」

後片づけがほとんど済んだ部屋の中。
出してあげた日本茶を片手に、ソースケが言った。
さすがに電話口であんな事言えば、何があったって思うわね、普通。

「ん、なんかね……」

理由を言いかけて、苦笑。そのまま机の上で頬杖をつく。
考えたら、何の目的もなく呼んでしまった。宿題は言い訳に過ぎない。
実際、あたしも手をつけてないし。

「ふむ…そうか」

何か聞いてくるかと思ったら、あっさり納得してちょっと拍子抜け。
ソースケと居ると、何となく落ち着くのよね。
ぼんやりしながら唐突に、思った。
今まではそんな事思うなんてこれぽっちも思わなかったのに。
もちろん、恥ずかしいから面と向かってそんな事言えないけど。
生まれた頃からずっと戦場育ちで、日常の常識なんて全くない戦争バカ。
学校での爆破は日常茶飯事、というよりもはや風物詩となりつつある。
全く、とんだ風物詩もあったもんだわね。
でも。
逆にこいつがいないと、あたしはどことなく落ち着かない。
こんなに騒々しいやつなのに。
好き、ともちょっと違う。なんだろ、この感じ。

「ふぅ……」

ふと見ると、ソースケがこっちをじっと見ていた。
あたしが視線をあげるとあいつは慌てて視線を戻す。

「ん、どうしたの?」
「い、いや……。なんでもない」

むっつり顔に汗一筋。
焦ってるな、と思った。
多分、あたししか分からない程の変化。

 

「ふふ……」

なんとなく、可笑しくなってあたしは笑う。
そのやりとりが、すごく自然に思えたから。

「そっか。そうなんだ……」
「む。何がだ?」
「ううん、何でもない」

 

なんとなく、分かった。
これが、「あたし達の日常」だから。
学校でみんなとわいわいやって。
勉強して、遊んで。
そして、こうやって何事もなくソースケが傍らにいてくれて。
いつの間にか、これが普通になってたんだね。
高校2年の、あのときから。ずっと、この空気に馴染んでたんだ。
今までずっと続いてきたはずなのに、今気づいたような気がする。
色々な感情がごっちゃになって、少し涙が出た。
ごしごしと目元をセーターの袖で拭って。

「泣いているのか?」
「何でも無いったら!」

もう、バレバレ。
変なところばっかり目敏いんだから。
苦笑しつつ、どうやって仕返ししてやろうとあたしは頭を巡らせるのだった。
乙女の涙の見物料、結構高いわよ!

 


痕書。

毎度、SERAです~。
何が目的なのか分からない小説第一段(爆
一応、メインテーマは「かなめの誕生日」。別にそれがテーマじゃなくても書ける内容なだけに、自分の話の展開の下手さ加減にはちと閉口してしまいますが。
なんというか、ぽや~っとしているかなめが書きたかっただけという話もあるわけで。
それにしても、なぜかこの二人って何でもない日常の場面が浮かびやすい。
爆発も戦争もない、穏やかな時間が二人に似合うような気がするのは私だけ…だろうね(笑
一応、これと対になる宗介サイドの話も思案中です。
駄文ではありますが、こんな文章でも感想送っていただけると嬉しいです。
それでは、次回作で(あるのかよ)!

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