宗介とソースケ 第1話 by 祀汰ユーの助(みかど)
――――― 暖かな風、軟らかい日差し。初夏の季節。
遠の昔に桜は散ってしまったが、それでも青々と茂った緑の木々も、それはそれで見物だ。
ただ一つ、物足りないと思うのは、話し相手がいないこと。
静かなだな・・・・
いつもなら何かと騒がしい朝の登校。だが、今日は久しぶりに一人ぽっちでいつもの駅への路を歩いていた。
ハリセンもその姿を学生鞄の中で燻っていた。
まあ、たまにはのんびり歩くのもいいかっ
そんなことを思いながら、吹いて来る風を気持ちよさそうに全身に浴びるかなめの姿が、いつもの通学路にあった。
青々と茂った駅へ続く並木。この時間とあってか、行き交う人は皆、通勤するサラリーマンや通学する学生ばかり。大体は急々と足早に歩いてるが、その中で一人かなめは遅めのテンポで歩いていた。
今日はゆっくり、この初夏の暖かな空気を味わって行こう。そう思ったからだ。だが、いつもと状況が違うから、というのもある。
それは、いつも斜め後ろで控えている、彼――護衛・・・・が見当たらない。
アレがいたんじゃ、こんな落ち着いた朝なんて、まずないからねー・・・
皮肉で言ったつもりだったが、言った後、かなめ自身それが皮肉にならないと分かる。
はあ・・・・・
少しあきれた感じの溜め息。だが、その溜め息と共に、どこかさびしさも出る。
「どうしてるかな、アイツ」
それは二日ほど前の話・・・・・
「少し遠くに行って来る。だから2、3日は帰れない」
夕飯をすませ、テレビでも見ようとベッドに腰掛けると、それはいきなり来た。
PHSの先から聞こえて来る抑揚の少ない声。それは「宗介だ」と一言いった後、すぐに話を切り出してくる。
「遠くって、どこ?」
それはいつもの『任務に行ってくる』というものだった。
前は自分から聞かない限りこうしたことは教えてこなかったのに、気がつけばあちらから連絡して来るようになっていた。と、いうか学習させたと言った方が正しのかも。
「それは・・・・まあ・・・・遠くだ・・・・」
(・・・・ん?)
いつもだったらすぐに「アラスカだ」とか何とか答えるくせに、何故か口をつむった宗介。千鳥はすぐにピンと来た。
(なーんか隠してるな・・・・)
誠実、真面目。これが彼の代名詞。好きなところでもあるが、逆に彼は『嘘』をつくのが苦手だ。前はたとえそれが相手を傷つけるものでも正直に答えたが、最近はそれを包むことを覚えてきた。良い事なのだろうが、おかげで最近は自分にも『嘘』をつくことが増えた。
「それで?」
だからわざと自分も意地悪な言葉で返してみる。
「え・・・・・」
「だから、あんたが2、3日いないからって何?」
トゲのある口調。
「だから、その・・・・いや、それだけだ」
ここで「いってらっしゃい」「早く帰ってきてネ」なんて言えば可愛げがあるのだろうが、どうも嘘をつかれた事が感に触る。
「そう。んじゃ、ノートを取っとく必要はないのね」
「いや!それは・・・・・」
慌てる宗介の声。それを聞いて、きっと今ごろ脂汗を流しているだろう彼を想像して、かなめは「ざま―見ろ」と思いつつも「しょうがないわね」と思い、さっきとは違い優しい口調で話す。
「ウソよウソ。ちゃんと取っといてあげるわよ。だからちゃんとお仕事してきなさいよ」
「・・・・・・すまない」
そう言って、すぐにお互い簡単な挨拶をして電話を切る。
何やら『嘘』をついているようだが、それもまあ、アレにもアレなりの事情があるのだろう。そう最近はあっさり納得できるようになって来た。
それでもやっぱり意地悪な自分は抜けきらない。いつも言ってあげたい言葉もやっぱり今回も言えなかった。
かなめはちょっとさびしい気持ちになったが、足元に落ちていたボン太君人形を抱きしめると、言えなかった言葉を投げかける。
「気をつけて・・・・・帰ってきなさいよ」
とまあ、早い話しが宗介は任務でいないのだ。緑の並木と並んで真っ青な空を見上げ、宗介の顔を思い浮べる。
まったく。いるといるで何かとうるさいのに、いないといないでさびしいなんて・・・・・重症よね、私も。
そんな年頃の女心にふけるかなめ。だが、そんなかなめの耳に、今一番心にある言葉が跳びこんでくる。
「ソースケ」
「え?」
あわてて辺りを見まわすかなめ。
「今・・・・・」
確かに聞こえた、彼の名前。まるで、有名人の名前が聞こえて来たかのように辺りを見まわすかなめ。だが、もちろん宗介の姿は見当たらない。
「そうよね。別にソースケさんなんてこの地球上に五萬といるに決まってるわよね。なーに見まわしてんだろ私、ははははっ」
なーにいちいちその名前に反応してんだか。
かなめは、少し顔を赤めさせながら、笑って自分をごまかした。
「さーて、遅刻しちゃう遅刻。急がなきゃ!」
そう言ってかなめは彼のことを振り払うかのように、いっきに走り出した。
どうも物思いにふけって歩いていると、最近は一つのことしか頭に浮ばなくなってしまったかなめだった。
つづく
あとがき
って、ああー続いてますねー・・・・。初投稿のクセに続き物だなんて・・・・。すみません大変おめぐるしい物です!これのどこがフルメタなんだってつっこまれそうです(汗)
えっと、なんかプロローグで終わってしまった感じなのですが、この話しはこの後『ギャグ』という路線で進んで行きます。(何かシリアスっぽいですけどネ)
いきなり本編に突入すればよかったんですが、それだとあんまりにも「ソーかな(?)」にならないなあと思いまして・・・・。
こんなモノですが、もしご覧いただけましたら幸いです!続きはポチポチ書いていきたいと思いますので。それでは失礼しました。
祀汰 ユーの助 (みかど)