宗介復讐計画 第6話 by ドイワー
大貫善治から見た相良宗介、それは獰猛な猛獣よりも危険極まりなく悪質な存在である。以前二度に渡り苦汁をなめさせられ、そのたびに血の争いを繰り広げた。そして三度目の悲劇は起こっていた。そう、それは一週間前の事だ。
その日は晴れていた。とても天気がよく暑すぎもなく、そんな最高の天候だった。そういう日にはたいてい人の気分は晴れるものだ。そしてココにも一人気分が晴れている男が・・・
「~~~♪」
両手で大事そうにつぼを抱える用務員、ほかならぬ大貫善治である。言葉には出さずともその表情、歩調、気配から誰にでも分かる・・・否・・・分からぬ人間が一人、教室にいた。
「大貫善治・・・なにやら皮をかぶっているようだが・・・何を企んでいる・・・?」
その瞬間ハリセンが凄まじい勢いで振り下ろされた。
「あんたはっ・・・!!どうしてそう物事を悪い方向へとしか考えられないの!?」
「しかしかなめ・・・やはりどんな状況下でも最悪のケースを想定しなければ・・・」
またもハリセンが空を切り、そして宗介の頭を捕らえる。
「また見逃した・・・一体何所から・・・それになかなか痛いぞ」
「黙れぇ!!・・・とにかく!平凡な人に危害を加えるな!!!」
「むぅ・・・」
宗介はしぶしぶ大貫から視線を外した。しかしこの時に宗介は大貫の持っているつぼがどうしても気になっていたのであった・・・
その日の昼休み、大貫は寝床にてつぼを鑑賞していた。
「~~~・・・♪」
やはり見ているだけ。そして大貫はこのつぼには特別な思い入れがあった。そんなときに突然校内放送が鳴り響いた。
「大貫善治さん、大貫善治さん、いらっしゃいましたら至急生徒会室までお越し下さい」
(ハテ・・・まぁいい。行くとするか)
大貫は少々考える事もありながらも重い腰を上げ、生徒会室へと向かっていった。しかしこの時に彼はミスを犯した。・・・つぼを置いていってしまった事である。
「と、言う事で大貫さん。予算は生徒会が負担しますので校舎裏のトイレを修理していただきたいのです」
淡々とした口調で林水敦信は大貫に告げた。
「ほいほい、そんなものは朝飯前じゃ。お安い御用じゃよ」
大貫もまた淡々とした口調で答えた。
「ありがとうございます。では出来れば明後日までには・・・」
「ふぉふぉ・・任せなさい。明日には直っておるじゃろう」
大貫はそういうのを最後に生徒会室を出て行った。その後林水と美樹原だけになった教室で美樹原がおもむろに口を開いた。
「なんだか・・・大貫さん、ご機嫌そうでしたね」
「うむ。それにより修理を快諾してくれたのはありがたいことだ」
その時・・・突然巨大な爆発音が響いた・・・
「また・・・相良さんでしょうか・・・」
「うむ。恐らくそうだろう」
その後生徒会室にはしばらく静寂が訪れた。
寝床へ向かう廊下を歩く大貫善治もまたその爆発音を聞いていた。
(・・・はて・・)
なにやらとてつもなく不吉な予感に襲われ大貫の足は自然と速くなっていた。そして寝床に辿り着くと大貫は唖然とした。
「・・・な・・・」
そこは何もなかった。ただ瓦礫の破片と大穴があり他のものは消し飛んでいた。なんだかんだで放心している大貫に一人の女子生徒が話しかけてきた。
「ああ・・・大貫さん、その・・・なんというか・・・説明しづらいんですが・・・」
大貫はその女子生徒に顔を向ける。確か・・この子の名前は千鳥かなめだ・・・
「あのですね・・・その、宗介の馬鹿ドジ間抜けが・・・その・・・」
「千鳥、ココは俺が説明しよう」
かなめの後ろから男子生徒が出てきた。何故か服は黒い迷彩服のようなものだった。そして何より大貫はその男子生徒を見たとたん目が点になった。その男は今までに度も苦渋を舐めさせられた男、相良宗介だったのである。
「説明します。本日一三三〇時、この場所にあった部屋内にて不審な置物を発見、厳重な調査の結果、安全保持のためやむなくプラスチック爆弾を用いて部屋ごと爆破しました」
「ば、爆・・・破・・・」
大貫は思わず膝が崩れた。それとほぼ同時にかなめのハリセンが炸裂した。
「この馬鹿!!あれほど言ったのに!!」
「しかしだな、それはあくまで結果論だ。この世に100%の安全はありえない。例えそれが万分の一でも校内に危険をもたらす場合は排除する、それが俺の使命だ」
なぜか「えへん」と言わんばかりの口調で話す宗介。そして頭を抑え首を左右に振るかなめ。そして大貫はと言うと・・・放心していた。
「あのー・・・大貫さん?」
「む・・・うむ・・相良君、ちょっと・・」
かなめが声をかけるとどうやら意識を取り戻したらしく宗介に手招きをしかなめの死角となる廊下の位置まで呼び出した。
「なんでしょうか」
「君が爆破したと言うつぼはね、私がつぼに興味を持ち始め、そして始めて自分で作ったつぼなんだよ。そう、例えいくら金を詰まれても譲れない、このつぼの為にならば私は罪も犯すだろう」
「は、はぁ・・」
宗介はこの瞬間からなにやら背中に殺気のようなものを感じていた。
「つまりね・・・あれは私の命の次・・・いや、それ以上のものかもしれん、と言う事なんだよ」
「は・・・申し訳ありませんでした・・・」
そう言いながらも宗介の額には汗が流れていた。過去の経験上こう言う類の話をする場合大貫善治にバーサーカーモードへのスイッチが入り「狂戦士・大貫善治」に変化する時なのである。
「相良君、人には決してかけがえの無いものがあるんだよ・・・?」
「は・・・その・・・恐縮です・・・・」
まずい・・殺られる・・・宗介はそう思い始めていた。もしかするとあの悪魔のようなAS「ヴェノム」と戦うときよりもまずいかもしれない。そんな事が脳裏によぎり始めた。
「相良君、これからは気をつけるんだよ。じゃ」
「は・・・は?」
そういうと大貫はそのまま何処へと歩いていってしまった。残された宗介は・・・しばらくあっけに取られかなめのハリセンでようやく我に返った。宗介の中ではこの事件は終結したと思っていた。
そして現在、夜7時・・・学校にほとんど人は残っていない。そんな中、大貫善治は新たに立てられた寝床で怪しい作業を行っていた。
「ふぉふぉ・・・どうした妖刀鬼殺し・・・そんなに血がすいたいか・・・おぅおぅ、チェーンソーよ、また肉を切り刻みたいか・・・?」
両手に武器を持ちぶつぶつと言っている。まるで背中に「滅殺相良」とでも書いてありそうである。
「相良・・・相良・・・今度こそ切り刻んでくれるわ・・・」
もはやバーサーカースイッチオン五秒前だ。4・・・3・・・2・・・1・・・
「大貫さん?」
「!?!?!?!?!?!?」
突然の越えにより大貫は一気にノーマルモードへ引きずり戻された。振り向くとそこにはおさげで眼鏡の女の子・・・確かな名前は・・・稲葉瑞樹・・
「ちがうわよっ!常盤恭子!!・・・っていうか大貫さんそれなぁに?」
「え?あ、いや、コレはなんでもないんじゃよ」
大貫はとっさに背中の後ろに隠す。しかしチェーンソーや妖刀が背中で隠しきれるはずが無い。
「ふーん・・・ちなみにコレなんだか分かる?」
常盤はポケットから小さな長方形型の機械を取り出した。そのスイッチと思しき部分を押す。そうすると・・
「相良・・・相良・・・今度こそ切り」
「!!??」
大貫は頭の中が真っ白になる。つまり常盤は先ほどの独り言を録音していたのである。
「な、なぜこんな時間に・・・」
もはや何がなにやら分からない状態である。そうすると常盤は笑顔と共に喋りだした。
「うーーん・・・しいて言えば昨日教室から飛び出してきた大貫さんがおかしいからしばらくつけてた・・・って感じかなぁ」
大貫は思い出す。そう、あの時だ・・・そして大貫は観念したらしい。
「す、すまない・・・警察へも何所へでも突き出してくれ・・・」
大貫は両腕を常盤の前に差し出す。しかし常葉の反応は大貫の全く予想しなかったものだった。
「大貫さん、相良君を倒したいんでしょう?」
「え?あ、まぁ・・・その」
「誤魔化さなくてもいいよ。それに他にもそういう人達いるんでしょ?」
「いや、いない!仲間を売る事は出来ん!決していないぞ!」
大貫本人は隠し通したつもりらしいが・・・どう見てもバレバレである。
「ふぅ・・いるんだねぇ・・・正直言うと?」
「その・・・います」
「っふっふふふ・・・そしてその人たちは皆失敗している・・・」
「よ、よくわかるの・・・・」
「そこで、この常盤がチャンスをあげましょう」
「チャ、チャンス・・・?」
そういうと常盤はポケットから一枚の紙切れを差し出した。
「校内・・・球技大会?」
球技大会、そういえば大貫にもそのような言葉は聞き覚えがある。
「そうそう。で、下のほう見て」
「下のほう?」
大貫は紙の下段の部分のところに目をやる。
『スペシャル企画!好きなチームを組んでのドッチボール大会!!先生もモチロン参加OK!!挙句の果てには在校生の許可さえあれば地域の住民も参加可能だ!!今回ばかりは先生にボールを投げても当てても怒られないぞ!!是非参加しよう!! 文・林水敦信』
「ね?それで大貫さんはその例の人たちとチーム組んだら?」
「む、むぅ・・しかし相良はやるのか?」
「そこはアタシにまかせなさいな。その変わりにこれが終わったら勝っても負けても相良君を対決しないでね?カナちゃんかなり疲れてるみたいだし」
実際、かなめは疲れていた。最初の風間から始まり現在の大貫までの5人が宗介に何かするたび少なからずかなめは絡んでいたのだ。
「よし、分かった。約束しよう」
「そう?ホントだね?嘘ついたらこれ、ばらしちゃうから」
そういうと常盤は例の録音機を右手で差し出した。
「じゃあね、大貫さん、体には気をつけて!」
常盤は律儀に敬礼をすると走りながら帰って行った。
(生徒が脅迫か・・・昔は良かった・・・)
大貫は感傷にふけりながらどこか悲しそうな目をしていた。そして一つ心に決めていた。
(明日・・・あいつ等を集め・・・当日相良を・・・倒す・・・)
続くっぽい!
あとがき
無茶しすぎ?大貫爆発がなぜない?不満を蓄えそうな内容でした・・スイマセン・・
特に常葉が悪役ぶり発動です。そして次回、次々回で総当り。大貫チームはまだしも
相良チームがどうなるか・・・予想してください。多分外れます(オイ
最後にこれで一人でも楽しむ事を祈りココに記します。