宗介復讐計画 第10話 by ドイワー
「相良ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふもっ!ふもっ!ふもっふ!!!」
投げられては投げ返し、投げては投げ返される。先ほどからそれが幾度となくボン太君と椿の間に行われていた。
「ふっもっふ!!」
「甘い!おらぁ!!」
そしてそれを見守るだけの千鳥かなめはなんとも複雑な気分であった。
(さっきからこの調子・・・全っ然勝負つかないわよね・・・)
「うおりゃあ!!」
「ふもっふ!!」
(かといってこの戦いに入ることなんて出来ないし・・)
「喰らえ!!」
「ふもふもふもふ!!!」
(あぁ・・もう!どうすればいいの!!)
「とどめだ!」
「ふっふっふっもっふ!!!」
「ちょっとぉ!!さっきから二人だけで争うな!!」
「ふも!?」
突然声を上げたのは+1チームの三人目、若菜陽子であった。
「さっきからあんたら二人だけで試合して!!ちょっとは他者にボール回しなさい・・・ってボールは?」
「ふも!?」
気がつけばボン太君の手からボールが消えていた。椿も持ってはいない。一体何所へ・・・と思っていた時、突然何かが割れる音がした。
「ん!?なんだボールあるじゃねぇか。にしても・・よくココまで飛ばしたな・・・」
「ちょっと!オノD!なんでそっちにボールがあるのよ!」
「俺に聞くな!聞くなら相・・・ボン太君に聞け!!」
「ふ・・ふも!?」
実はあの時突然の声に宗介あろうものが驚き、手元が狂ったため見当違いのほうに飛んでいたのであった。
「まぁいいわ・・・それよりオノD!さっきの音はなに?」
こめかみに指を当てつつかなめが問う。それに対しオノDはあっさりと答えた。
「いやな・・・なんか皿が壊れたみたいなんだよ・・・これ・・あぁ!しまった!」
「って何やってんの?」
そういうとオノDは皿の破片と思えしきものを投げた。しかしその拍子に持っていたボールまで敵陣地に入ってしまった。
「・・・!!」
その行動に対しいち早く反応したのは大貫だった。先ほど投げられた欠片を見つめわなわなと震えだしたのである。
「?大貫さん・・・どうかし・・!」
椿が何かをいいかけるが突然喋るのをやめる。一流の戦士である椿は感じたのだった。大貫からあふれ出る『殺気』を。
「お、・・大貫さん?」
大貫は椿を無視するかのように陣地のボールを拾いゆっくりとボン太君を見つめ語りだした。
「ボン太君・・・この皿はね・・・私が連休を浪費し描きあげた絵の入っている皿なんだよ・・・世界に一枚しかないね。そして今は焼き上げる前に寝かせておく・・・そういう大切な時期だったんだよ・・・」
「ふも・・・?」
「それを君は壊した。しかも故意に、だ。もはや完全に吹っ切れたよ。以下に非道を行ったといえど高校生・・・少しは改心するかと思っていたが・・・君はより私を怒こらせたいんだね・・・?」
大貫はボールを持った手を大きく振り上げ最後にこう言った。
「GAME・OVER」
「ふも!?」
いきなり大貫が放ったボールはボン太君目掛けて飛んできた!そしてボン太君がとった行動とは・・・
「ふも」
伏せた・・・オノDのように・・・そしてボールは・・・あの人に当たった。
「うきゃあ!・・な・・何であたしが・・・」
婦警・若菜陽子・・・GAMEOVER・・・
「・・・っていうかもしかして・・・」
「ふもふもふもふも・・・」
+1はまたも危機に追いやられた。純粋に二体三である以上相手が有利な上現役ドッチボーラーの芳樹にあの椿、そして暴走モードの大貫である。
「もうダメかも・・・ん?なにソースケ・・・ん?・・・・ふむふむ・・おぉ!!」
かなめがあきらめかけた時にボン太君が突然近づき何かを助言していった。それを聞くとかなめは突然やる気を出したかのように目の輝きを取り戻した。
「ふもおぉぉぉ!!」
ボン太君は精一杯助走をつけボールを放った。狙いは当然椿だ。
「ふ・・・甘い!次はこちらの番だ!今度こそ止めをさし・・てえぇぇぇ!?」
勢いよく踏み込み、まさにボン太君目掛けて投げようとした時、かなめが両手を左右に広げボン太君の盾になる形で、椿の眼前に立ちふさがった。そして椿は・・・
「あ・・・っとお・・・とわあ!」
かなめに当てまいと無理をし、ボールを離してしまった。そしてボールはかなめの手の中にすっぽり納まり・・・
「えい」
当てられた――――――――。
「よっしゃあ!これで二体二!!」
「ふもっふ!!」
ボン太君とかなめが二人そろってガッツポーズを送る。というか・・・この光景は結構貴重である。
「何所を見ておる!!ボールはこちらが持っているのじゃぞぉ!!」
大貫は叫びながらボン太君目掛けてボールを投げた。暴走しているためきわめて早いボールである。
「ふもっ!」
しかしボン太君はあせらず、そして落ち着いて避けた・・・に見えたが・・
「きゃあ!?」
「ふもっ!?」
突然かなめが声を上げて崩れた。側にボールが転がる。つまり・・・当たったらしい。
「ふもっふっふ・・・(カーブボール・・・)」
そう、先ほどの大貫のボールはボン太君が避けると共にかなめのほうに曲がったのだった。そしてかなめは反応しきれずに・・・当たった。
「痛ったぁ・・・・あはは・・やられちゃった・・じゃ、後は頼んだわよっボ・ン・太・君♪」
かなめはそう言うとスキップしながら外野へと向かっていった。実はこの時かなめの心境としては・・・内野の大貫(暴走)と外野の椿にはさまれた状態にあるのは非常にいやだったため・・・簡単に脱出できた事を喜んでいたのであった。
「・・・・・・・・・・・・・ふもぉ・・」
+1の内野に残されたのはボン太君一人のみ・・・。ボールはこちらにあるものの・・・現在の心境はまさにジャングルの奥地、一人敵に囲まれ弾薬が切れ掛かりさらに救援の機体が皆無・・・そんな状態だろうか。
「ふもぉ・・・」
「どうしたんだいボン太君。もうお手上げかい?」
しょげたように肩を落とすボン太君。それを見て芳樹が鼻で笑うかのようにボン太君に言う。
「ちょっとボン太君!なにやってんのよ!」
「ダメだよ負けちゃ!」
「俺の死を無駄にする気か!?」
「痴漢撃退の時のパワーを見せろ!」
「あぁ・・え、えぇ・・とぉ・・・と、とにかく頑張れ!」
外野の仲間から声援とも野次とも呼べる声が飛ぶ。それを聞くと意を決したかのように、ボン太君は力いっぱいボールを投げた!そしてそのボールは・・・
「ぐはぁ・・・」
オノDに当たった・・・それも顔面・・
「ははは・・今度は同士討ちかよ・・・!?」
芳樹が笑いながら呟く。しかし突如自分に影がかかったのだった!
「ま、まさか・・」
「そのまさかよぉぉぉぉ!!」
影を作っていた主はかなめだった。さきほどオノDにあたり空高く跳ね上がったボールをかなめが飛びキャッチしたのだった。そしてかなめは落ちつつ芳樹に向かってボールを投げつけた!!
「ぐ・・・しまったぁぁぁ・・・・」
突然のことで対応しきれずに芳樹は当たってしまった。かなめは当てるとすぐさま内野に向かって走り出し、ボン太君の背に隠れた。どうやら前半にやられた神楽坂の事を覚えていたらしい。
(しかし・・・何故戻ってきてしまったのだろう・・?)
「ぬぅぅぅぅぅりゃあ!!」
考えるかなめをよそに大貫対ボン太君の戦いは続いていた。しかし徐々にボン太君が押され始めた。
「ふもっ・・・ふむぅ・・」
ついにボン太君はボールを取ると投げ返さずにかなめと作戦会議を始めた。
「ふもふもふもふも・・・」
「・・はぁ!?絶対無理だって・・!」
「ふもふもふもふもふもっふも!!!」
「だってあたしはただの民間人・・」
「ふもふもふも。ふもふもふもっふもふふも!!」
「・・・わかったわ。やってみましょう」
「ふも!」
約四十五秒の作戦会議が終了すると、二人はボン太君の後ろにかなめが隠れる形の陣形を組んだ。
「さぁ、ソースケ・・・いくわよ・・・」
「ふもっふ!!」
ボン太君は勢いよく前に走り出した。そのスピードにあわせかなめもボン太君の背中にぴっしりとくっついている。
「ふもぉぉぉ!!」
ボン太君はセンターラインぎりぎりのところでジャンプをした。そしてその背中にはかなめがいる。そのままボン太君はボールを投げた・・・しかし・・上へ。
「・・?・・・・!!!」
若干不可解な行動に怪訝な表情をする大貫だがその意味はすぐに分かった。ボン太君がどくとそこにはボン太君を踏み台にさらに高く飛んでいたかなめが先ほど上に投げたボールをキャッチしていた。しかもボン太君がいる時は気づかなかったが大貫の視点からだと完璧な逆光の位置関係だった!!
「もらったああああ!!」
「グオオオオオオ!?」
かなめはそのまま重力を利用し、大貫の体に殴りつけるようにボールを叩き込んだ!そして数秒後・・・
「グ・・・オォォ・・」
大貫はその場に倒れた―――――――。
「や・・・やったあああああ!!」
「ふ・・・ふもっふ」
かなめは嬉しさのあまりにおもわずボン太君の頭をベシベシとたたいた。しかしその時・・・ボン太君の頭部パーツが・・外れた。
「あ・・・」
「む・・・」
思わず目を合わせる二人。その後その視線は若菜の方へと向かった。案の定―――――。
「お・・・お前は・・・」
「あ、あのですね・・・若菜さん・・これには・・・ふか~い訳が・・」
「そうだ。まずは話を聞け。さもなくばこの場で射殺す―――」
「あんたは喋るな!!」
思わずかなめのハリセンが炸裂する。かなめはこの時久しぶりだなぁ・・という感覚に見舞われていたがこれは別の話。
「ハアッハッハハアッハッハァァ!!覚悟!我にとって最大の悪魔よ!!」
若菜は猛スピードで宗介目掛けて突進してきた。当然宗介は逃げる。あっという間に二人ともかなめの前から砂埃を残し消えてしまった。その後一定間隔で銃声が鳴り響いていた。かなめはなんとなくポケットの中のハンカチを振っておいた。
「ソースケ・・・あんたの戦いは終わらないのね・・・」
そんな風に感傷に浸るかなめの後ろでは大貫がタンカで運ばれていた―――――。
翌日、久々に例の部屋。
「失敗に終わったな・・・」
「そうね・・・完璧・・・」
「だ、だから僕はいやだって・・・」
大貫以外の三人が皆眼を細めながら言う。大貫は考え事をしながらもそれをやめ口を開いた。
「皆・・・・一つ言いたい事がある・・・」
「?」
「奴・・・相良宗介は・・・我々のこの行動に気づいていたのだろうか・・・?」
「・・・」
皆黙ってしまう。考えてみれば宗介に対し何かをしたものの宗介はそれにすべて気づいていないのである。
「つまり・・・まだ気がつかれていない・・・と、言う訳じゃ・・・」
「・・・!」
皆はっとした表情になる。そして・・・風間以外の四人の口元が・・・僅かに緩んだ。
翌日
「?宗介、何読んでるの?」
「千鳥か。朝来たら入っていたのだが・・・」
「何々・・・『悪夢はまだ終わらない・・・』何コレ?」
「分からん・・・だが間違いないのは俺に対する脅迫文だという事だ・・・これからにでも筆跡鑑定を行い全生徒の照合を・・」
「せんでええ!せんで・・・」
かなめはハリセンを振り下ろしながら宗介に告げた。宗介はしばし迷った後手紙をポケットに入れ何事もなかったようにかなめ達と雑談をはじめた。しかしそれをドアの影から腕を組み、見つめる一人の男がいた―――椿一成である。彼は若干口を緩めた後に、
「相良よ・・・悪夢はまだ・・終わらん!!」
そして椿はドアを勢いよく蹴り飛ばした。
終わり
あとがき
やっとこ終わりました・・・最後のほう無茶がある?言わないでくださいな・・・(汗
とにはかくともコレで終了です。終わり方にひねりがないとか言われても・・・知りません(何
最後に・・・今まで見てくださった方、果たしているかどうか分かりませんが、ありがとうございました。
こんなものを見てくださって、心から感謝申し上げます。ネタが出たら・・・こりもなくまた送ったりするので・・・
その時はよろしくおねがいします(一礼)