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2014.02.20 10:49

真夏のおもひで? 第6話 byグロ

 りーんりーん
 鈴虫が鳴いていた。綺麗で静かな音色だ。
 その音をバックにある部屋では激しいバトル(?)が繰り広げられていた……
 
「少し質問があるのだが……」
「なぁに?そーすけ。」
「なんですか?相良さん。」
 三人は部屋の真ん中にいた。
 千鳥とテッサはお互い宗介に寄り添うようにしていた。そして寄り添いながらも二人は、互いににらみ合いその間には火花が散っている様な感じがした。宗介は二人の間に脂汗を大量に流して硬直していた。
「なぜ二人はこんなに近づこうとするのだ?近くに敵はいないぞ。別に近づく必要性は今はな……」
 そこまでいったところで宗介は言葉を詰まらせた。二人からそれぞれ出ている殺気に気押されされてしまったのだ。数々の修羅場を潜り抜けてきた宗介だったがこんなにすごい殺気を感じたことはそれほどなっかた。それ故に宗介は何もできなくなってしまった。
「宗介。」
 いきなり千鳥が話しかけてきた。宗介が驚きの表情で固まっていたが、彼女はそのまま続けた。
「今から外へ散歩しに行かない?たまには息抜きも必要でしょ?」
 それを聞いたテッサが後ろで「何ですって!?」と言う顔をしていた。
 宗介は驚いていたがすぐに表情をもとのむっつり顔に戻し答えた。
「うむ。それもいいだろう……テッサ殿も一緒に行きますか?」
 千鳥は『何でテッサなんて誘うのよ!』と言いたそうな顔をしていた。
 テッサは『やった!相良さん感謝です。千鳥さん墓穴を掘りましたね。』と小声でつぶやいていた。
「じゃあ行きましょうか。相良さん。」
「それじゃ、行くわよ。ソースケ。」
 二人は宗介に猛烈な視線を注いだ。その視線には誘惑と言うより殺意に近いものがこもっていた。宗介は敵に囲まれたような感覚に陥った。気がおかしくなってしまった宗介は、
「き、貴様らの目的は何だ……」
 二人は宗介をあざ笑うように答えた。
『一緒にさ・ん・ぽ』
 
―――双山荘近くの道にて―――
 三人は月明かりの下を歩いていた。
 普通なら景色もいいので会話が弾むものだが、三人の間に会話はなかった……
「……」
 宗介は困っていた。旅館からここまでまったく彼女達と話していない。一体どうしたのだろうか。俺は何もしてないはずだが……
「ねえソースケ」 
 沈黙を破り最初に話しかけてきたのはかなめだった。
「月が綺麗ね。」
「う、うむ。このような明るい時は敵に見つからないように慎重に行動をとるべき……」
 宗介は彼女達の宗介を譲らない気持ちから生じる殺気により気がおかしくなっていた。本人は敵地のど真ん中にいるような感覚に陥っているようである。
「はあ?何言ってんのよ」
「まあ相良さん。落ち着いてください。まずはそこのベンチに座って月でも眺めながら一緒に話でもしましょうよ」
 今まで黙っていたテッサからのアタックが開始された。もうすでに彼の腕を掴んでいたりしたりしている。
「て、テッサ殿!?一体何を……」
「まあ何と言いますか……とにかくこのままでいたいです。」
「は、はぁ……りょ、了解しました。」
 そんなやり取りを千鳥が黙って見ているはずがなかった。
「そーすけぇー。」
 本人なりに色気を出して話しかけつつテッサの掴んでいないほうの手を掴んだ。
「ち、千鳥まで……。ま、まさか二人とも薬物に……」
 美少女二人に腕を掴まれると言う未知の状況に頭が混乱していた……今の彼の気持ちは敵に見つかって敵十人対自分一人で銃撃戦をしている気持ちになっていた。
 三人はしばらくそのままの状況でいた。
「テッサ殿、千鳥。」
「え?何ですか。相良さん。」
「ん?なーに。ソースケ。」
 宗介のいきなりの質問に対して二人は少々驚いていた。ついさっきまでにらみ合いをしていたからだったからだ。
「い、今の君達はかなりおかしいぞ。一体どうしたというのだ。この旅館についてから様子が変だ。理由は何なのだ。できれば教えてほしいのだが……」
『え!?』
 二人は驚いた。宗介を誘惑するつもりがいつの間にか宗介を自分たちのせいで心配させてしまっていたのだ。二人の心配をよそに宗介は続けた……
「自分なりに可能性を挙げてみたが、君達はもしかして薬をやってしまったか?それとも……」
 すぱぁん
 説明していた宗介の口が千鳥のはりせんによって止められた。テッサはその光景に目を丸くしていた。
「はぁ?あんた何言ってんのよ。私は別に普通……」
「ち、千鳥さん……それはちょっとひどい気がします……相良さんもひどい事言わないでください。」
 宗介は千鳥のはりせんの衝撃が残る中安心したように答えた。
「……うむ。それがいつもの君達だな……いつもに戻った感じがするな。」
『え!?』
 宗介の意外な言葉に二人は驚いたが、どこか安心した。そして二人は笑顔で答えた。
「……ありがとう。ソースケ。」
「ふふ、ありがとう。相良さん。」
 宗介はよく意味が分かっていなかったが安心した。自分もこの方がいいと思った。
「いい夜だな……」
「うん。いい夜ね。」
「ええ。いい夜ですね。」
 三人はその後もしばらく月を眺めていた。
 満月は三人を明るく照らしていた。


あとがき

 とりあえずハッピーエンド(?)ですね。この話に月がちょくちょく出たのは自分自身が月を見るのが好きなのとそして見た目綺麗だからです。月を見ながらお茶を飲む最高ですな。
 それではこの話これにて完結です。どうもありがとうございました。

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