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2014.02.20 10:50

仁義なきドリンキングセッション 第3話 by 量産型ボン太くん

同日 〇〇四〇時 【レバニラ】艦橋

「…できることなら使いたくはなかったのだが、そんなことを言っている場合ではないようだな。」
「何のことでしょうか?」
「ワタミ島に保管されている【イケヅクリ】のことだよ。相良くん。」
「な!?し、しかしあれは…。」
【イケヅクリ】とは、帝国軍の開発した兵器であるが、そのあまりの残酷さに諸外国の反感をかい、条約で使用が禁止されたものである。
「このままでは艦隊が全滅しかねない。だが、本部から許可を貰うまでは現状を維持せねばならん。全艦艇に別命あるまで戦線を維持せよ、と通達しておいてくれ。」
「了解…しました。」
そしてそれから3時間後、遂に本部から【イケヅクリ】の使用許可が降りる。

〇四三〇時 【レッドロブスター】射撃指揮所

射撃指揮所には1組の男女がいた。砲術長のメリッサ・マオと彼女の部下のクルツ・ウェーバーである。
「なあ、姐さん。今回の敵の艦名知ってるか?【モツニコミ】に【レバニラ】ときたもんだ。もっと色気のある名前つけらんないんかね~。例えば【ニョタイモリ】とか…。」
「何わけわかんないこと言ってんの。無駄口叩いてる暇があんなら仕事しなさい。」
「へ~い。よっこらせっと。さーて次はどいつを…。ん?なんだあれは……うおっ!?」
クルツの声とともに【レッドロブスター】は白い閃光に包まれた。

〇四五〇時 【スイートポテト】艦橋

「大佐殿、【レッドロブスター】が敵の攻撃を受け、大破しました。沈没も時間の問題です。」
「なんですって!?いったい何にやられたと?」
「攻撃を目撃していた味方の駆逐艦の報告によれば、敵はどうやら【イケヅクリ】を使用したようです。」
「【イケヅクリ】ですって…?なんて卑劣な真似を…。」

〇五〇〇時 【レバニラ】艦橋

「閣下。敵艦の撃沈に成功しました。」
「うむ。このままの勢いならば我々の勝利は確実だろう。だが…。」
林水司令が窓の外を見ると水平線がうっすらと明るくなってきていた。夜が明けたのだ。
「残念ながら今日はここまでだ。ただちに撤退準備にかかってくれたまえ。」
「はっ?」
宗介はめずらしく間抜けな声をあげた。
「聞こえなかったのかね、相良くん。撤退だ。」
「何故ですか、閣下。敵艦隊はもはや壊滅状態です。ここでとどめを刺さねば後々帝国にとって厄介なことになります。」
すると林水司令は以外そうな顔で言った。
「相良くん、君ともあろうものが交戦規定も知らないのかね?」
ここで言われている交戦規定とは、「ノミカイ」によって制定された。国際機関「ノミカイ」は各国が集まり、条約等の取り決めを話し合う機関である。問題の交戦規定は「ノミカイに属する国家は他国と交戦状態に陥った場合、夕方の5時~翌日の明け方までしか戦闘行為を行うことはできない。」とされていた。
「ともかく撤退だ。早急に味方を救助し、撤退する。」

〇五三〇時 【スイートポテト】艦橋

帝国軍が撤退していくのを見てテッサは安堵のため息をついた。
「相手が律儀に規定を守ってくれて助かりました。こっちにはもう反撃できるだけの兵力はありませんでしたから。私達も帰還しましょう。」
「了解しました。」

同時刻 【カツオノタタキ】の救命ボート

「いや~。あんときゃマジで死ぬかと思ったぜ。なあ、風間?」
小野寺の問いに風間は頷いた。
「うん。そうだね…。もうこんなのはこりごりだよ。早くうちに帰りたい…。」

同時刻 【レッドロブスター】の救命ボート

「しっかしまあ、2人揃って助かるとはなぁ。俺と姐さんってやっぱり縁があるんだよ。うん。運命の赤い糸ってヤツ?」
「……………」
クルツはマオにボートから蹴り落とされた。

〇六〇〇時 【レバニラ】艦橋

「やっと終わったわねー。っていうか今回あたしの出番がほとんど無かったんだけど。もしかしてあたしがこんなとこに来なくてもよかったんじゃないの?」
かなめが宗介をジト目で見る。
「いや、そんなことはない。君のおかげでずいぶん助かった。感謝している。」
「なんか台詞がしらじらしいんだけど。」
「…気のせいだ。」
宗介はこめかみに汗をうかべていた。
「それにしても先輩、あんなもの使っちゃって本当によかったんですか?後で他の国に何を言われるかわかりませんよ?」
「千鳥くん、【イケヅクリ】のことならば心配はいらないよ。他国への言い訳などどうにでもできる。」
「どういうことですか?」
「いかに有能な国家元首であっても後ろ暗いことの1つや2つはあるということだよ。それに共和国軍は既にノミカイを脱退している。
いわば世界中を敵に回しているようなものだ。今さら国際世論に訴えかけるような事はできないだろう。」
「この極悪人…。」と、かなめはつぶやいた。

おわり


あとがき

うぃっす。量産型ボン太くんっす。これで一応最終話です。こんなオチかよ、と思うかもしれませんがむしろ最初にオチを考えてから中身を考えたのでこんな事になったわけです。題名の「ドリンキングセッション」っていうのは「飲み会」という意味です。たしかそのはず…。
つまり飲み会なので夜が明けたら帰らなくちゃならない、というわけです。【イケヅクリ】というのは当初【オドリグイ】になるはずでしたが、結局【イケヅクリ】になりました。それと、当たり前ですが活け造りは別に国際条約では禁止なんぞされてません(笑
一部の国の法律で禁止されてたりしますが…。それから実はこの話の最後の部分にも初期設定があったのですが、テサリストとしての尊厳に関わる事になるので現在の形になりました。では、ありがとうございました~。

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