どうしようもないテロリズム 第2話 by 量産型ボン太くん
街から少し離れた山の中に、男達はいた。 山といっても彼らがいる所は比較的平らで、結構広い場所だった。
彼らの側にはASが置いてあった。
最強の陸戦兵器と呼ばれるこの人型兵器は、彼らの切り札だった。
ASが相手では警察の装備では対処できない。
彼らは今、10人程でたき火を囲んで話をしていた。
「今日襲った工場も、いい具合にいったなあ」
「ああ、あそこまでやれば工場を再開させることは不可能だろうな」
「俺達の野望が達成される日も近いということだ」
「こいつさえあれば、警察なんか相手じゃねえしな」
男が側にあったASに手をついて笑うと、その2つとなりのASが轟音をたてて吹き飛んだ。
「なっ…!?」
男達が驚くなか、次々にASが撃破されていく。敵の姿を捜してみてもどこにもいない。
ただ何もないところから容赦なく銃撃がくる。そして遂にその場にあった彼らのAS全てが破壊された。
彼らの切り札となる筈だったそれは、今やただの鉄くずと化していた。
「くそっ、一体どうなってやがる!」
男達は姿の見えぬ敵の出現に、すっかり冷静さを失っていた。
一応マシンガンを構えるものの、どこを狙ったらいいのか分からない。
せめて敵がどこから撃ってきてるか分かれば…。それさえ分かればいい。男達はそう思っていた。
ASは失ったが、彼らにはまだ歩兵や装甲車を相手に出来るくらいの備えはあった。
その時、男達の考えを見透かしたように敵が姿を現した。
大気が陽炎のようにゆらめき、青白い電光がほとばしる。
男達が見ている目の前で、それは空中から染み出るようにして出現した。
目の前に現れたそれは見たこともないASだった。丸みを帯びた灰色の装甲、華奢なようでいて力強いシルエット。
男達は愕然とした。自分達が銃を向けている相手が、自分達が先程まで所有していたものと同じ……いや、もっと強力なものだったのだと認識したのだ。
マシンガンやロケット弾程度ではこの兵器には勝てない。それは彼らも十分わかっていることだった。
逃げる気力さえ失い、彼らはただ呆然とそのASを見上げていた。
するとASのパイロットがスピーカーで彼らに呼びかけた。
「逃げ場はない。大人しく投降しろ」
驚いたことに、それは若い女の声だった。
その頃、かなめは恭子と昼食をとっていた。
午前中の授業はこれといった事件も起こらず、平和に過ぎていった。
相変わらず教室内は異様な空気を放っていたが……。
かなめはカスタードパンを黙々と食べていた。
恭子が独り言を漏らす。
「それにしても相良くん、どこ行っちゃったんだろうね。よりにもよって今日早退するなんて。せっかくカナちゃんが手作りチョコ持って来てくれたのに」
「あのねえキョーコ…。何度も言うようだけど、あたしはあんな奴にチョコなんかあげないの」
「え~、じゃあ誰にあげるの?」
恭子が悪戯っぽく聞いてくる。
「別に、誰にもあげないわよ」
実際には、渡すかどうかは別としてかなめはチョコを持って来ていた。
しかし今朝の宗介を見る限りでは、宗介は今日これを貰う事の意味など知らないだろう。
意味もなく渡すというのも何だかむなしい。
かなめは窓の外を見ながら溜め息をついた。
テロリスト達の隠れ家の制圧に成功したマオ達は、付近の警戒にあたっていた。
「いやいや、今回も楽な任務だったな。後はこいつら縛り上げて転がしときゃOKだろ。残りは警察がやってくれるしな」
クルツの気楽な発言に宗介は顔をしかめた。
「気を抜くな。どこかに伏兵がいるかもしれんぞ」
「そうよ、この間だってそうやって油断してる時に敵の襲撃受けたんじゃないの。狙われたのがソースケじゃなくてあんただったら、まず間違いなく死んでたわね」
マオも宗介に同意する。
「オイオイ、姐さんまでソースケの肩持つのかよ。……俺はなんて孤独なんだろう」
「馬鹿言ってんじゃないの。それにおかしいじゃない。ブリーフィングの時はASは6機って言ってたのに、ここには4機しかいないのよ」
「それは俺も気付いていた。どこかに潜んでいるには違いないのだが…」
宗介はそう言うと、辺りを見回す。
だが、センサーには今のところ反応がない。
「たぶん襲撃された時の事を想定して、全滅しないように機体の隠し場所を分散させてたのね…」
マオが呟くのと同時に、すぐ近くで甲高いタービン音が鳴り響いた。
そしてマオ達のすぐ近くの地面から2機の<サベージ>が姿を現した。
どうやら穴を掘ってその中にASを隠していたようである。
「わお。随分と用意がいいわねー。この状況で出てくるあたりはあまり利口とは思えないけど」
「出てきてくれなければ困る。恐らくあと10分程で警察が到着するぞ」
「しかしあれじゃまるで、冬眠から覚めたカエルだな」
マオと宗介とクルツがそれぞれ敵の出現方法に感想を言う。
そんな3人をよそに、2機の<サベージ>の中の片方が3人にスピーカーで話しかけてくる。
「よくもやってくれたな」
パイロットは低い声の男だった。男の言葉にクルツが答える。
「テロリストなんかに言われる筋合いはねえな」
すると敵のパイロットはくぐもった笑い声をあげて言った。
「我々がテロリストだと…?違うな。我々はある崇高な目的の元に集まった同士だ。工場への攻撃は目的達成の手段に過ぎん」
「そういうのをな、世間一般じゃあテロリストって言うんだよ」
クルツは身構えながらそう言った。ゆっくり話をしている時間はない。
だが、男は構わず話を続ける。
「何とでも言うがいい。だが、我らの目的を知ってもなお、おまえらは我々を攻撃できるかな?」
「何だと?」
「教えてやろう。我らの崇高にして偉大な目的を…」
そして男の口から語られた彼らの目的に、クルツ達は衝撃を受けた。
つづく
あとがき
何となく先が読めてしまった方、すいません。これが俺の限界ってやつです(汗