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2014.02.20 11:03

宗介、ニートになる by 量産型ボン太くん

「そういえば相良くんて、もし就職するとしたらどんな仕事に就くのかな?」

昼休み、常盤恭子が興味津々といった様子で聞いてきた。
聞かれた本人━━千鳥かなめは、彼女が苦難の末にゲットした『魂のル・フランスパン』にかぶりつきながら適当に答えた。

「んぁ?ホーフケ・・はむ、もふもふ、ふもっふ、んぐ。ソースケのことだから自衛隊にでも入るんじゃないの?」

一応彼の“本業”を知っているかなめではあったが、まさかそれを言う訳にもいかないので適当にそう言っておく。
恭子は「確かにそれが一番ありそうなんだけど」と言いつつも、違う可能性を提示してみた。
つまり、彼がもっと意外な職業に就く可能性を、である。

「たとえば?」

「えーと……サラリーマン、とか……」

かなめは宗介のスーツ姿を頭に思い浮かべてみた。別に似合わないわけではない、と思う……。
ただあの宗介が会社勤めなんてできるのだろうか。たぶん、面接で落とされる。
かなめと恭子はその様子を想像してみた。

—————————————

「……ではまず、我が社への入社の動機を聞かせてもらおうかな」

「はっ、磨かれた技能を生かし、この会社の発展に貢献することであります」

「磨かれた技能、ね。特技は何だい」

「偵察と爆破、及びASの操縦です」

「………………………」

「どうかしましたか?」

「………いや、面白い冗談だと思うがね、とりあえず真面目に答えて貰いたいな」

「自分は至って真面目ですが」

「ふざけているなら帰ってもらうことになるぞ?」

「ですが、事実です」

「では詳しく聞かせて貰えるかね?」

「残念ながら、その質問にお答えすることは出来ません」

「何故?」

「あなたには知る資格がないからです」

「………相良宗介、不採用、と……。もういい、出ていきたまえ。次の方どうぞー」

—————————————

想像終了。
絶対に向いてない。宗介には会社勤めは無理である。

「なんか、すごいありえそうな話だね……」
「ていうかたぶんホントにそうなると思うわよ……」

「なにを考えてるのか知らんが、えらく失礼な想像をしているようだな」

かなめ達の隣でアメリカ軍の野戦食(えらく不味いことで有名)を仏頂面でつつきながら、しっかりと聞き耳をたてていた相良宗介が箸を止めて呟いた。

「んなコト言ったってさぁ、このままだとマジでヤバイわよ?今の成績だと卒業自体危ういし、大体卒業後どうする気よ。こういうのなんて言うんだっけ?働かなくて、勉強しないで、とにかくな~~~~っんにもする気が無い人のこと」

「ニートか?」

別のグループで昼食をとっていた小野寺孝太郎が振り返り言った。
かなめ達の声は教室中に響いていたため、思わず相づちを入れてしまったらしい。

「そう、それよそれ。ソースケ、あんたニートになってもいいの?」

本来のニートの意味とはかなりかけ離れた用法だが、気にしない事にしよう。
だが、言われた当の宗介本人はというと、

「ニートか・・・やってみる価値はあるかもしれん」
「・・・・」

真剣な面持ちで考え込む宗介を、かなめと孝太郎たちがどんよりとした目で見つめた。

「どうした?なんだ千鳥、その目は」

「ソースケ・・・とりあえず、あんたの想像するニートの意味を言ってみなさい。100字以内で。『、』や『。』も一字に数えて」

「・・・NEAT(ニート)。Near-Earth Asteroid Trackingの略。NASAによる、地球に接近する小惑星を観測するプロジェクトの名だ。このプロジェクトで発見された彗星はNEAT彗星と呼ばれている」

「・・・・そういう発想の飛躍って・・・・・ある意味、スゴイ才能よね」

かなめはがっくりと肩を落とした。

おわり

おまけ

~囚われのカリーニンさん~

「武知征爾って名前を聞いたことある?」

たいして返答を期待していない風情のセイナからの質問を頭の中で反芻する。
しかし彼の知りうる限り、その様な名前の人物に心当たりはなかった。

「いや」

「日本人の傭兵よ。(中略)彼は日本に帰国してから事業を始めたの。何だかわかる?」

「警備会社ではなさそうだな」

「福祉事業よ。<ネバーランド>っていう変わった名前の組織でね。
目的は非行少年の更生。彼は少年達を自分が建てた施設に放り込んだのよ。
最初は反発した者も、すぐに彼に従うようになったわ。
電気水道はもちろん、食料さえない場所だったから。
彼の言うことに従わなければ、生きていけなかった」

「効果的だな」

「でも<ネバーランド>は長くは続かなかったわ。
不審に思った保護者が施設に勝手に上がりこんで、寝室で寝ていた彼と少年達を発見したのよ」

「決定的瞬間だったわけか」

「そうよ。あとはもう、ずたずた。
自分達の不法侵入を棚に上げて、彼を児童虐待で訴えたの。
こぞってハイエナのように。警察と裁判所も出張ってきて、結局施設は解体された。
生徒達の過去も暴露されたわ」

彼女の声に、冷たい怒りがこもった。

「でも、話はそこで留まらなかった。武知征爾は裁判所に出頭する際、こう言ったのよ」

『俺は子供達と一緒にベッドで遊んでただけだ!みんなとベッドの上で裸で遊んでいただけなんだ!』

「施設内で何をしていたのかが如実に分かる発言だな」

<ネバーランド>。単なるテロリスト、過激な武装民兵、というわけではなさそうだった。
セイナがつかつかと彼のそばまで歩いてきて、身をかがめた。
横たわったままのカリーニンに、息が吹きかかるほどの距離まで顔を近づける。

「どうしてこんな話をすると思う?」

「わからんな」

本心だった。皆目検討がつかなかった。
てっきり捕虜の尋問(自分の事だ)に来たとばかり思っていただけに、何故この局面でホモショタテロリストの話を持ち出されたのかが。カリーニンが脳内で武知征爾という人物についてそう評していたところ、セイナが答えを言った。

「あなたが似ているからよ。その武知征爾にね」

カリーニンは凍りついた。

ロシア人とエストニア人のハーフであるカリーニンに、似ている日本人がいるとも思えなかったが━━━それ以前に、間違ってもそんな変態男に似ているなどとは言われたくない。カリーニンは必死に表情を変えないように努力し、脂汗を流しながら搾り出すような声で尋ねた。

「その武知征爾は今どうしている?」

「釈放されたわ。保釈金を山のように積んで。あっけないものだった」

部屋に、お寒い空気が流れた。

おわり

あとがき

NASAの方のNEATは実在するそうです。

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